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村人Aの異世界叙事詩  作者: ユッケ=ビビンバ
第三章 災いの詩〜双竜覚醒編〜
40/120

第40話 竜が眠る火山

始めて評価を頂きました!!

やはり自分がしたことを誰かに評価してもらうことは気持ちが良いですね。

 “モーラ神国”

 この国はユニオスにおいてもこの世界においても長い歴史と伝統を持つ国の一つである。数度の栄枯盛衰を繰り返しながらも、今日まで当時の伝統を絶やさずに繋いできている。

 半島と幾つかの島からなる国家で、一年を通してカラッとした陽気の日が多い。

 暮らしている人々の性格は陽気で明るく、されども家族や友人、伝統を重んずる人情深い一面もある。

 国旗は三色旗トリコロールに十字架と教皇冠、そして円を描くように十二の星々が描かれている。

 治めているのはユニオスで広く信仰されている宗教の教皇である。彼の性格は非常に優しく温和で、多くの人間から慕われる徳の高い人物だそうだ。


 僕達が乗る魔動列車は首都を過ぎ、ヴォルビオ火山に最も近い大都市“ニアポリ”へと向かっている。

 ニアポリはモーラ第三の都市と言われるほど発展しており、南モーラの中心となっている都市だ。

 観光名所として知られ、ヴォルビオ火山の他にニアポリ大聖堂をはじめとした数々の建築物や美しく碧い海が有名である。

 そして何よりも―――


「ピッツァが絶品らしいんだよね〜。食べてみたいな〜、本場のピッツァ・マルゲリータ〜」

「……なあ、ユーリ。ピッツァはいいんだけどさ、ナレーションを奪わいでくれない?」

「なれー……? 何のこと?」

「……いや、何でもない」


 先程もユーリが説明した通り、僕達は魔法で動く列車“魔動列車”に乗ってニアポリへ向かっている。ヴォルビオに潜むと言われる竜を見つけるためだ。

 竜を見つける、それは途方も無く危険な仕事だ。緊張は避けられない。

 そのはずなのだが……


「ピッツァ~ピッツァ~マルゲリータ~~♪」

「楽しみですねユーリ様」

「うん! 着いたらクリスも一緒に食べようね!」

「も、勿論です!! ユーリ様とピッツァ……熱々のピッツァを食べさせあったり、ユーリ様の口についたソースを拭き取ったり……ムフフ」


 初めて食べるピッツァを夢見て間抜けな顔を晒すユーリ。その顔を見て更にひどい顔となっているクリス。二人とも若い女の子がしてはいけないような顔をしている。

 んでもって、ユーリの膝の上のモフは小動物とは思えないブッサイクな寝顔を晒している。

 そんな二人と一匹に呆れながら、通路を挟んで座っているゴウラとアリスに目をやる。


「すっげーぞアリス! すげー速い! 馬車とは段違いだ!!」

「ええ、すごいわ! 一体どうやって動かしているのかしら!? 魔術を扱う者としては気になって仕方ないわ!!」


 こっちの二人は初めて乗る魔動列車に大興奮のようだ。童心に帰ってはしゃいでいる。

 まったくコイツ等ときたら、緊張の「き」の字も無いのか?


「ゴウラ、アリス、少し静かにしてくれ。周りに迷惑だし、何より僕が恥ずかしい」

「え~、別にいいじゃない。魔動列車よ? 人生で一回乗れるかどうかの代物よ? 興奮しない方がおかしいと思うわ」

「そういうもんか?」

「そういうもんよ」


 今乗っている魔動列車という物は最近になって開発されたらしく、その上魔導を扱える人にしか運転できない為、列車の本数自体がかなり少ない。

 その為、一回の乗車料金が異様に高い。庶民では決して手に届かない金額だ。だからこの四人はここまでテンションが高いのであろう。

 しかし、現代社会で電車に乗りまくっていた僕から見れば、この列車はだいぶ遅い。速度でいえば乗用車といい勝負だろう。

 そのせいか、いまいちその興奮とやらが伝わってこない。まあ、外の風景は綺麗だからまだいいんだけどね。



「おい、見てみろよ! ニアポリが見えてきたぞ!!」


 ゴウラが車窓の外を指差しそう叫ぶ。

 指差した先には朝焼けに照らされた大きな街と美しい海が見えた。

 そして街の向こうに見える一つの山。恐らくあそこが目的のヴォルビオ火山だろう。

 出発して凡そ十五時間。一つの夜を迎えて、漸く僕達はニアポリへと到着した。






 ニアポリに降り立った僕達を出迎えたのは二人の騎士だった。


「はじめましてなのです! ユーリ御一行なのですね? お待ちしていたのです!」


 そう言うのはどっからどう見ても未就学児である少女、もとい幼女であった。身長は一メートルに満たないほど小さく、着ている制服はそれ以上小さいサイズが無いのか、袖や裾を余らせている。桃色の髪を靡かせながら体全体で感情を表現する様や曇りなき笑顔は紛うことなき幼女のそれだ。

 対象的に隣にいる男性は初老に差し掛かったくらいの歳に見える。歳による白髪と本来の黒髪が混ざった灰色の髪、これまでの苦労が表れた顔の皺、ハリが失われ垂れた皮膚、剃るのも億劫なのか暫く整えていない灰色の無精髭。まるで絵に書いたようなオッサンだ。外套としての役割を果たしていない薄いトレンチコートを制服の上に着込み、頭には中折れ帽を被り、口元には半分ほどまで吸った葉巻を咥えている。

 二人とも通常の騎士が身に着けているような胸当てや肩当てなどの防具も腰に携帯してあるはずの剣も持っていない。周りからしたら騎士のコスプレをした祖父と孫娘のように見える。


「自己紹介が遅れましたね。私は……ワプッ!」

「ハハハ、お前も騎士なのか。ちっこいのにえらいなぁ」

「キャーカワイー! お嬢ちゃんいくつ? おじいちゃんと一緒に来たの?」


 幼女騎士の話は二人の大人げない大人のナデナデによって遮られる。

 歳を取ると小さい子供を可愛がりたくなるものなのか?


「や、やめるのです! やめてほしいのですー!!」

「遠慮すんなよ〜。ウリウリ〜」

「ホントカワイイわね〜。ヨシヨシ〜」

「やめて、やめ…………やめろっつてんだろ」


 突如、可愛らしい幼女の声は瞬く間に静かにドスをきかせた声へと変わる。顔は修羅のように恐ろしく、纏っている雰囲気は極道のような貫禄を曝け出している。

 彼女を愛でていたゴウラとアリスの喉元には刃がそえられていた。幼女が持つソレは彼女の見た目に反して凶悪そのものだった。所謂ガンブレードと言うやつだろう。重そうな自動式オートマチックの二挺拳銃の銃身にコンバットナイフのような刃が付けられている。そんな中二心をくすぐる凶器が二人に向けられていた。


「言っとくけどよぉ、こんなナリでもオレぁアンタ等より倍近い人生送ってきてんだ。そんなオレに子供扱いとかやめてくんねえかなぁ?」

「「……イエス、マム」」

「よろしい。ったく…………はい! じゃあ気を取り直して自己紹介いってみるのです!」


 ロマン拳銃をしまい、幼女は何事もなかったかのように見た目相応の愛らしい笑顔に戻る。僕達にとってはそのギャップが恐ろしく感じる。

 そんなことは気にせず彼女は話を続ける。


「私は帝国騎士団南方部隊隊長“双児宮”のアンジェラ・ツウィンなのです。気軽にエラちゃんって呼んでほしいのです。そして、横に居るのはキッドちゃんなのです」

「帝国騎士団捜査部隊隊長“磨羯宮”のディカプラだ。キッドてのは愛称だ、無理にそう呼ぶ必要はない。俺とコイツは同期で何十年も騎士として勤めてきた、言わばベテランだな。今回は俺らが中心となって獄炎竜の捜索を行う。よろしく頼むぜ」


 そう言ってディカプラさんは紫煙をくゆらせている。見た感じはくたびれたおじさんだが、亀の甲より年の劫、不思議と頼れる雰囲気を感じさせる。

 ただ気になることが一点ある。


(なあ、クリス。さっきディカプラさんがエラさんと同期だって言ってたけど、あれマジなの? どう見ても年齢二桁もいってないように見えるけど)

(マジですよ。彼女の種族は“ハーフリング”。人間の半分ほどの身長しか成長せず、人間より長い人生の殆どを若々しい姿で過ごす亜人デミ・ヒューマです。彼女は私のお父様や現皇帝とも若い頃から付き合いが長く、今でも友人同士だそうです)

(……うっそー)


 あんな見た目で僕達より年上で聖十二騎士ゾディアックで皇帝と友人だなんて……。あ、よく見たら耳もエルフ程じゃないがとんがっている。

 まじまじと見ていた僕に気付いたのか、エラさんがこちらに笑顔を向けてきた。彼女の親し気な笑顔に僕は引きつった硬い笑顔で返す事しか出来なかった。



「んじゃ、挨拶も済んだし早速ヴォルビオに向かうぞ」

「えー! ちょっと待ってよ! 僕、この街のマルゲリータを食べていきたいのに―!」

「んなもん戻ってきてから幾らでも食えるだろ。それよりも俺たちは一刻も早く獄炎竜を見つけなきゃなんねえだろうが」

「折角楽しみにしてたのに………ぶー……」

「まあまあ、早く終わらせて一緒に観光でもなさいましょう。ね、ユーリ様」


 ぶうたれているユーリには申し訳ないが、ディカプラさんの言う事は正しい。

 一分一秒でも早く竜を見つけないと“七つの美徳”に先を越されてしまう。ライディンの時は被害は最小で済んだが、もし竜が完全に奴らの言いなりになったとすれば……。

 自身の首にかかっているライディンから貰った十字架の首飾りに目をやる。これを見る度に思い出す、あの絶望の瞬間を。ソレを他の人間に与えてはならない。

 そうはさせない為になんとしてでも竜を見つけなければ……!






 騎士御用達の馬車に乗り込み、着いた先では既に十人前後の騎士が待機していた。誰も彼も幾度の死線を潜り抜けてきたかのような勇ましい顔つきをしている。

 ディカプラさんとエラさんが彼らの前に立つと、騎士達は直立の姿勢をより一層張り詰めて二人の命令をまだかまだかと待つ。

 そのことを確認すると、ディカプラさんは満を持して声を上げる。


「総員、準備はいいな!? 前もって説明した通り、俺が率いるアルファチームは火山にある溶岩洞から探索、エラが率いるブラボーチームは火口から探索を開始する! それでは総員、健闘をいの―――」


 話を締めにかかろうとしていたその時、突如大地が身震いを始める。

 震度は一〜二といったところか。周りに崩れてくるような物もなく、揺れも小さいので特に被害が出るようなことはなかった。

 しかし、火山の近くでの地鳴り、更にその火山に竜がいると思うと、やはり不安は拭いきれない。

 その地鳴りが僕達にもたらしたものは大きかった。


「また、地鳴りなのですか……」

「“また”ということは、この地での地鳴りは多いんですか?」

「元々は滅多に無かったのですけどね。一ヶ月程前からでしょうか、今では最低一日に一回は地鳴りが起こるようになったのです。これも竜が原因なのでしょうか………」


 僕達の間に不穏な空気が流れる。誰もがこの数秒の事態に恐怖を煽られたのだ。

 どんな屈強な戦士でも災害には到底敵わない。それは本能に刻み込まれた事実なのだ。

 その場にいる全員が火を見た獣のように怯えていると、誰かが元気のよい大声を出す。


「よっし!! 地鳴りも収まったしさっさと行こうか!」


 その声の主はユーリだった。

 彼女はこの恐れをものともしていないのか、それともただの馬鹿なのか、恐怖も怯えも見せずに意気揚々と向かおうとしていた。

 それに触発されたのか、ディカプラさんも続いて声を出す。


「テメエ等ぁ!! 嬢ちゃんに遅れを取るつもりかぁ!!? それとも大切なモンにこの恐ろしさを伝えてえのか!!?」


 彼の一喝で目が覚める。

 そうだ。この恐ろしさを、竜の恐ろしさを他の人間には与えてはいけない。

 そう考えたのは僕だけではなかったようだ。


「そんなつもり毛頭ない!」「あんな若いガキに負けてたまるかよ!」「俺らにだって守るべきモンがあんだ!」

「だったらやることは決まったろ? テメエ等ぁ、捜査開始だァッ!!」

「「「応ッ!!」」」


 これが先程まで地鳴りで怯んでいた者達の姿なのか。彼らの目には怯えはなく闘志に満ちている。

 彼らを鼓舞しやる気を起こさせたディカプラさんの統率力には感心するが、何よりきっかけを作ったユーリは更に立派だと感じる。

 誰もが恐怖に陥るあの状況で、自ら勇気を奮う訳でもなく、ただ平然と立ち向かおうとしていた。そんなこと僕には到底できやしない。

 これが勇者にだけに為せる御業ということなのか。


「何をボーっと突っ立ってんだよ。見とれてんのか?」

「みとっ!? 違うよ! ただ、やっぱユーリはすごいなぁ、って」

「当然でしょう、ユーリ様は勇者です。すごくないはずがありません」

「まあそりゃそうだけども……」

「ほらそこ。喋ってないで出発するわよ。ヒロ、アナタはアタシ達と一緒に洞窟組よ。クリスはユーリ様と一緒でしょ?」

「そうですね、ユーリ様を待たせるわけにもいきませんし」

「うっし! そんじゃいっちょやってやるか!」


 ゴウラ達も恐怖の色を一つも見せずに勇気凛々と歩き出す。

 彼らは常日頃からユーリの勇気に当てられてきたんだ。この光景など既に見飽きているはずだ。

 だからだろう、無意識の内に彼らも恐怖をものともせず勇気の光を発し続けている。


「? どうかしたのヒロ?」

「……いや、なんでもないよアリス。それじゃあ、行こうか」


 僕もそうなりたい。彼らの光に当てられるだけじゃなく、ユーリとともに光の中を突き進めるようになりたいんだ!

 その為にも、僕は一歩踏み出した。






 僕達、アルファチームが目指す溶岩洞というのはヴォルビオ火山の中腹にある。

 溶岩洞と頂上の火口とは最短ルートが違うため、アルファチームとユーリがいるブラボーチームは麓の時点で別行動となった。

 山は比較的登りやすい上、既に馬車で標高千メートル付近まで登ってきていたため登山に苦労することはまずなかった。

 そんなわけで僕達は無事に溶岩洞の入り口にまで辿り着いたのであった。


「それにしても、全くモンスターに会わなかったな」

「元々観光地だしね。人が通るような所には普通いないわよ。と言っても、人が立ち入らない火山の内部まではその保証はないけど」


 アリスの言う通りだ。

 僕達が本気で挑まなければならないのは目の前の溶岩洞に入ってからなのだ。

 中には恐らくモンスターがいる。そして何より獄炎竜ヴァニファールが潜んでいる。

 用心していかなければ……。




 溶岩洞の入り口はまるで木のうろのようにポッカリとその口を開けている。

 待ち構えている訳でもなく畏怖させる訳でもなく、ただそこに虚ろに開いていた。

 その人が十分に通れる入り口の奥は曲がりくねっていてよく見えない。しかし、僅かにだが硫黄の臭いとともに、温かい風が吹いているのを肌で感じる。どうやら行き止まりではないようだ。


「情報通り、奥につながっているようだな。……よし、テメエ等! 突入すんぞ!!」

「そうはモンヤがおろさないっての!!」


 突如響く高い声。その声の主であろう者はディカプラさんの背後にいつの間にか立っていた。

 その者は白いコートで身を包み、フードを深く被り顔を見せないようにしていた。フードからチラリと見える顔には同じく白い仮面が貼り付けられている。身長からしてまだ子供、小学校高学年くらいの歳だろう。

 そんな小さな子供の手には、その見た目には不相応の凶悪なナイフが握られていた。

 今、その者が逆手に持ったナイフをディカプラさんの腹へ突き刺そうとする―――!




 ガギンッ!! とても人を刺したとは思えない音が響く。

 ナイフは彼の着ているコートを切り裂きはすれども、彼の皮膚がある所で止まりその先へは一寸も刺さろうとはしない。

 この事態に突き刺した本人は仮面を着けていても分かるほどに動揺している。ディカプラさんはその一瞬の隙を見逃さなかった。

 すぐさま懐から回転式拳銃リボルバーを取り出し、その白コートの子供の頭部に突き付ける。


 ダンッ!! 初めて聞く銃声音が鼓膜を刺激する。しかし、飛び出した銃弾はその子を捕らえず、小さな土煙を立てながら地面へと着地する。

 間一髪銃弾を避けた白コートは子供とは思えない跳躍で後方へ飛び退る。


「……ちぇっ、オッサンかってーな。もしかしてロボット?」

「正真正銘人間だよ。硬かったのは“硬化”っつースキルのせいだ。血統書でも見せてやろうか?」


 結構細かいことを気にする性格なのか、彼は話しながら先程撃ったばかりの薬莢を弾倉から抜き取り、新しい弾を詰めている。


「んなことより、テメエこそ何者だ? 子供ながらにその膂力、亜人じゃなさそうだが……アマゾネスか、ニグロイか、それともハ―――」

「ぐあぁあっ!!!」


 ディカプラさんの話は突然の男性の悲鳴によって引き裂かれた。

 声のした後方を振り返ると、そこには背中から血を流す一人の騎士、そしてもう一人の白コートの子供が手に凶器を持って立っていた。


「私達が何者かなんてどうでもいいでしょ? どうせ今から全員死ぬんだし」

「邪魔すんなよウル。こいつ等は俺がぶっ倒すんだからよ」

「バーカ。アンタが殺そうとしてたの聖十二騎士ゾディアックの一人よ。そんなのアンタ一人の手に負えるはず無いし。あと、敵前で名前呼ぶな、バカ」

「はあー? バカじゃねえし。バカっていうほうがバカだし」

「子供か」


 普段から仲が悪いのか、白コートの二人は僕達を放っておいて口喧嘩を始めた。目の前に敵がいるのに随分と余裕だな。

 ……いや、これはチャンスではないのか? 二人は今互いのことしか見えていない。今なら影魔導で彼らを縛り上げる絶好の機会だ!

 そうなれば早速………


(紅蓮、出番だ)

〔久々の出番だな。任せてくれたまえ〕


 僕の影が二方向へ分かれる。

 影は白コートに見つからないように騎士達の足元を縫いながら素早く彼らの元へ向かう。

 奴等にはまだ気付かれていない。

 よし! 確保だ!



 その瞬間、僕の瞳は確かに二人の白コートとは別の白い塊を捉えた。

 それは奴等同様突然現れたかのように、それでいて最初からそこにいたかのように、僕の目に映った。

 火砕流でできた黒い大地キャンバスの上に一際目立つソイツは、窓を認識しない鳩のようにまっしぐらに僕へ向かってくる。

 それを理解した時点でもう遅い。まるで生きている時間の流れが違うみたいだった。


「うっ!!」


 鳩尾に重い衝撃が響く。それで漸く自分が攻撃されたことに気付く。

 そう認識した直後に今度は背面全体に痛みが走る。どうやら何かにぶつかったようだ。


「ゴール……いや、ホールインワンか」


 さっきぶつかった時に頭も打ったのか、朧気な意識の中誰かがそう言ったのを聞いた。

 瞳を前に覗かせると、そこにはまた白コートの子供がいた。


 僕は死に瀕しているのか、その一瞬の映像が絵画でも鑑賞するようにゆっくり、かつじっくりと観察できた。

 僕は今、溶岩洞に居るのだろう。周りが暗いことからそれは分かる。

 目の前の白コート以外にも同じ服装の人間が四人、彼らは今まさに騎士団に襲い掛かろうとしていた。騎士達、そしてゴウラとアリスはすぐさまそれに対応し戦闘へと入る。

 入り乱れる戦場の中、何人かがこちらに向かって大声を出す。しっかりしろ、とでも言っているのだろう。

 しかし、僕の意識はもう限界だ。見ている光景が霞み始める。

 霞む視界の中、最後に見たのは、店先のシャッターでも下ろすかのように洞穴が崩れる様。そして、僕を攻撃してきた白コートがこちらに走る姿だった―――。

世界観を考えるときに厄介になってくるのは、道具なんですよね。

銃や列車は出してみたい。けれども世界観と合わないかもしれない。そんなジレンマに陥るわけですよ。

と言っても火薬はかなり昔からあるし、電気や蒸気機関は魔法で代用すればまだなんとか行ける気がする。

まあ、そんなこと気にせず楽しんでみて下されば嬉しいんですけどね。

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