果樹
モモクリ三年、カキ八年。
「リンゴは?」って聞くと、品種でばらつきがあり、3~6年ぐらいって話らしいよ。
「すみませんー。種しか手に入りませんでしたー」
ヨカワヤに多少の手間賃を払い、桃の種とリンゴの種を用意してもらった。
苗は売ってもらえなかったそうだ。仕方ないよね。古代社会だとほとんどの農家は苗の販売なんて考えないから。
あれ?
その農家、種だけ保管していたのか? 苗は置かないのに?
ちょっとヨカワヤさん、どうやって種を買いましたかー? 嘘はいけませんよー?
あ、サヴさん。こんな話があるんですけどー。
種の発芽は魔法でちょいちょい。
それだけで数週間分の時間短縮になる。作物の「発芽しないリスク」回避にもなるし。これ、とても大事。
日本で流通している種も、絶対に発芽するとは書いていないんだよ。古代のいい加減な保管方法の種については言わずもがな。発芽する確率は何気に半分ぐらいだったりする。
麦なんかは地面に落ちなくても発芽するほど生命力が強いんだけどね。ちょっとは見習え。
リンゴとモモは育てるのに適した環境が似ている。よって、同列に扱いつつ育ててみようと思う。本当はミカンもほぼ同じなんだけど、見た事が無いので探しようが無かった。無念。
リンゴやモモは冷涼な気候を好むので、グラメ村だとちょっと暑いぐらい。リンゴで有名な青森って、最高気温が30度を超える事って滅多にないらしいよ?
じゃあもっと南にある他の地方はどうやって栽培しているんだと言われると、高地で栽培しているんだよ。彼らの仕事場は山の上だ。空気が薄くなるし水っ気が足りないけど、逆にそれがいいらしい。
あとは昼夜の温度差が大きい方が良いというけど。
……また、温室を作れと? 初期に失敗作と断じた1層タイプで。温室って言うよりガラスハウスだけど。
とりあえず、ハウス栽培と露地栽培の両方をやろう。評価はそれからだ。
ああ、また地獄のガラス作りが始まる。終わらないんじゃよ、エンドレスなんじゃよー!
ただ、リンゴのハウス栽培ってあんまり聞いた事が無いんだよな。
鳥害や虫害には確実に強くなるけれど、環境コントロールの面で絶対に不利になる気がする。まだやってもいないから気がするだけなんだが。
試してから考えればいいか。
あと、リンゴとモモはどちらも受粉しにくいリスクがある。
受粉しやすい木っていうのは一本だけでも花を咲かせるんだけど、2本以上、出来れば他品種を近くに植えて受粉させた方が確実だ。
……いきなり躓いてる!?
いや、まだ時間はあるんだ。ヨカワヤに頼んでおくか。
「御慈悲、お慈悲をー。ちょっとだけ役得があってもいいじゃないですかー」
役得? ああ、リンゴを食べてたことね。
正直に言えば構わなかったんだけど、さっきは誤魔化そうとしたからね。誠実さが求められる商人としては減点対象だったというだけなのだよ。だから種さえ確保してくれれば食べてもいいよ。
そのかわり、味のレポートの提出もよろしくね。




