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ため池

 保水にばかり目が行き、地底湖は水を腐らせる結果となった。


「いえ。そもそも地下に水を溜めるのであれば、農業用水としては使い悪いですよ。井戸のように生活用水として使うなら構いませんが……はい、もっと早くに言うべきでしたね。申し訳ありません」


 そもそもの発想が間違っていたようで、なぜか相手に頭を下げさせる結果となってしまった。

 悪くない相手に頭を下げさせる。これが身分差と言う奴である。理不尽だな。


 地底湖の利用方法についてはまた後で考えるとして、専門家の意見を聞いてみよう。


「我々が想定していたのは、レンガによる囲いを作り、その中に水を溜めるというものです。この場合、ため池を作る場所は同じ高さか農地より高い場所が望ましいですね。

 あとは用水路を農地に引き、すぐに水を使えるようにするつもりでした。

 ああ、もちろん水を流すのは有事の際だけですよ。堰を作り、普段は溜めておくだけです」


 ……用水路。

 田んぼなどをイメージすると分かりやすいが、畑に用水路という考えは無かったな。


「そうですか? 生きていくのに水が必要なのは人も作物も変わりませんし、近くに水があった方が良いのも同じですよ。

 それに、用水路があれば大雨の時に排水の役にも立ちますから。作って損は無いと思います」


 これが、素人と専門家の差か。

 ご意見いちいちご尤(もっと)も。偏った現代知識では専門的な古代知識に勝てないという事らしい。


 いや、何から何まで勝てない訳じゃないけどね? 医療とか魔法とかは現代知識チートの独壇場だし。





 今度は計画の段階から手を借りる。

 作るときは俺の魔法でどうにでも。四方を≪石壁≫で囲って、周囲を土で盛って、農地まで用水路を作って。

 堰の部分だけは完全にお任せだ。板を入れるスリットを作り、近くに石板を用意しただけだが。堰は二つ作られている。


 このため池。造りそのものは雑だけど、有ると無いとではずいぶん違うらしい。


「本当は山などから水が流れ込むようにしたいのですが。このあたりは山がありませんから。枯れてしまう事があるかもしれませんが、雨水だけが頼りです。

 もっとも、定期的に放水をしないと酷い事になるので、雨が多い時期には自分から枯らしてくださいね。雑草などの除去も忘れずに。手入れをしないと、結局駄目になりますから」


 グラメ村から一番近い山は10㎞ぐらい内地に向かった場所にある小山だけだ。このあたりは基本、平地ばかりなのである。

 メシマズ村の近辺には結構山があるんだけどね。山がある事で川もでき、その分だけ村を作るに都合の良い立地条件だったのだ、とてもうらやましい事に。


 ……川があれば川魚も手に入るし。アユとかウナギって川が無いと手に入らないだっけ?

 山を作るのに必要な魔力ってどれぐらいかな? 川は自然にできてくれるかな? 魚は……他所から(うば)えば…………。



 俺の横道のそれた思考は横道だけに横に置き、仕事を終えた工兵たちは帰っていった。

 彼らの滞在は決められた期間、決められた物資を消費できる間だけだからである。

 2ヶ月の間、彼らは工兵としてその鍛えられた建築技術と蓄えられた農業知識でグラメ村に貢献してくれた。まことに、感謝の念に堪えない連中である。


 そんな彼らの認識を弄くり、村の秘密を知る事が出来ないようにした俺は極悪人だろう。物資も一部ちょろまかした(懐に入れた)し。


 彼らには彼らの事情があり、仕事にここへ来たことは分かっている。

 だが、彼らの労に対し、一言あって然るべきだろう。


「ありがとう、ございました!」



 あの人数では認識を弄るのが大変なので、もう来なくていいけどねー。

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