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リスクアセスメント

 増えた仕事の処理に追われ、それまでの仕事を雑にしてはいけない。

 毎朝の恒例、朝礼を終えたあとは指差し呼称だ。


「今日も安全に、ヨシ!」

「「「今日も安全に、ヨシ!!」」」


 毎日やって何の意味があるのか。

 やっている事に大して意味は無いのかもしれない。

 だが、決められたことを決められたとおりにやらせることで、決まりを守る習慣を身に付けさせることができるのだ。

 言うなれば、ルールの守り方を教えているようなものなのだ。


 古代人・日本人化計画とも言う。





 散っていく村民を見送り、俺もまずは農地の巡回をするかという所で工兵の隊長に捉まった。


「朝のアレは、一体何の集会なんでしょうか?」

「その日の作業を効率よく進める為の、意識共有だよ。その日に何をするのかが分かっていれば、いちいち上に判断を仰がなくてもいいだろう?」

「では、最後のはいったい何の意味が?」

「作業者が怪我をして仕事ができなくなったら効率が悪いだろ? だから一番効率が悪くなる要因を無くすために、安全が『常識』だと分からせているんだよ。

 それにミスがあればやり直しで余計に時間をとられる。迂遠でも『安全』な方法で仕事をするようにって意味もある。

 ま、とにかく効率を求めている訳さ」


 工兵が聞きたいのは朝礼の意味だ。毎朝、何度も見る事になれば知りたくなるのも不思議はない。この世界の住人には何のためにやっているのか全く分からないだろうし。


 これぐらいなら隠すほどでもないかな。この程度の事なら俺がわざわざ出張る事も無いだろうし、調子に乗っていろいろと教えてみよう。



 リスクアセスメントの「頻度」「発生確率」「危険度」から「対処優先順位」を付ける思考方法なども仕込んでみる。


 「仕事柄良く行く場所に」(頻度)

 「高確率で事故を起こしそうな要因があり」(発生確率)

 「その結果重大事故に繋がるなら」(危険度)

 「早めに対処しないといけない」(対処優先順位)


 という考え方だ。


 基本的に命の危険が最優先で対処される事になるが、軽い怪我で済む問題でもいつも高い確率で起きる事故であればそちらも早めに対処すべきと判断される。

 ついでに、自分の職場にどんな危険があるかを考え、どうやって危険を除去するかを考える事は、作業者の質を高める事にもつながる。リスクアセスメントへの参加は、ミスをしない、危険な事をしない人材を育てるのだ。



 一通り説明を終えると、工兵の隊長は納得した顔を見せた。意外と柔軟だな、この人。

 いや、逆だな。日本人でも色々考えちゃって捻くれた感情を持つことが多く、軽視しがちだった気がするし。こういった話を聞き慣れていないこっちの人の方が素直に聞き入れるのだろう。 


 説明を終え、しばらくたってからふと思った。

 こうやって知識を広める事のリスクについて、俺はもう少し考えるべきか?


 工兵隊長に(公爵関係者に)知識を教える(情報が伝わる)と、興味を持たれてしまい自由が奪われる。

 与えた知識が多ければ多いほどより興味が強くなり、自由が奪われる確率が上がっていく。


 気のせいだよな?

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