表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/550

ノーフォーク農法(下準備)

 この村に元農民は1人もいない。

 連れて来なかったから、当然だ。


 農民を連れて来なかった理由は簡単だ。


 この世界の農業の常識を、持ち込まれたくなかったからだ。



 人間ってやつは、常識に従って生きる生き物だ。異端を嫌うというべきか。

 犯罪者だろうが、あれは常識を知った上で、それを利用するとか悪用するとかしながらも、罪悪感があるかどうかは知らないけど「悪い事」と理解して罪を犯す。

 馬鹿や既知(キチ)(ガイ)にいる奴は悪事を悪事として認識せず――って、それはどうでもいい。


 とにかく、常識を持っている奴は、俺が提唱する新しい、地球式の農法に従わない可能性が高かったんだよ。





「という訳で、畑から石を取り除けよー」

「「うーす」」


 農業初心者がいきなり最高の成果を出せる訳も無い。

 やる事はシンプルに。

 徐々に改善をモットーに。

 積み重ねろ、俺達。

 明日はきっと、葬らんだ!



 この世界、中世ですらないんだよ。

 雑草を抜くのと石を取り除くのと、最初はこの2点だけを徹底する。だけど他ではこんな事すら徹底されていない。近くの農村、メシマズ村で確認したから間違いない。


 (くわ)(すき)で耕すことはする。

 大きな岩は取り除く。

 雑草は抜く。


 けど、掘り起こす土が浅すぎる。

 肥料をやらない。追肥も無い。

 小石は放置。

 抜いた雑草はそこら辺に捨てるから、雑草は生き返る。

 案山子とか動物対策もやらないから、獣害も酷い。



 駄目なやり方で満足されるわけにはいかない。

 とにかく、俺のやり方を徹底させる。

 ただしいきなり全部はやらない。一個できたらまた次の一個を。そうやって新しい農法を馴染ませる。慣れさせる。それが常識なのだと、思わせる。

 いきなり全部やらせようとしても無駄だからな。





「よーし! 雑草はこっちで、石ころはこっちだ! 小さい石を持ってきてもいいぞ! 集まった量次第だが、ご褒美もある!!」

「「おっす!!」」


 育てる作物だが、メインはカブと小麦から。

 1年を通して食用可能なカブは救荒植物で、小麦はこの世界で一般的に食べられている代表的な穀物だからだ。

 米、稲作がやりたいけど、見つかっていないので、米は無いものと諦めている。


 それに、小麦とカブに大麦とクローバーを加えればノーフォーク農法が成立する。

 家畜はまだいないけどな! 馬車の馬は返却したし!

 準備だけは進めておきたいんだよ。



 で、この辺りで収穫可能な作物の品定めをするのも目的だ。

 最初の一年は何が育つのかを知りたいってのもある。

 近隣と同じ作物を大量に作っても意味が無いので、特産になり得る作物を探すところからスタートだ。


 小麦やカブだけじゃなく、小さい農地で色々と試す。

 アブラナ、菜の花みたいな黄色い花を見つけたので、個人的にはこれを増やして菜種油が欲しい。搾りかすは肥料になるらしいし、菜種自体が香辛料として扱われもする。食文化の発展の為にも育ってほしいと期待している。

 あとは何種類かの根菜と、芋類を試してみたい。

 特に芋類は上手く行けば大量生産ができるだろうし、かなり期待している。



 とはいえ、本当に全部うまくいくことは無いだろう。

 何種類か成功すれば御の字だ。


 知識チートは、所詮知識。

 経験ではないのだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ