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この魔法使いな新郎に新築を

 たまに聞くだろう。奴隷紋とか隷属の首輪とか。

 現状を見るに、本当に欲しいと思うよ。そんな便利アイテム。


 後で記憶を改ざんするからいいけどさ。

 新しく屋敷を作る為っていう名目で、500人ほど派兵されてきたんですけど。


 もうやだ。

 本当に面倒くさい。





 人が来るのは分かっていた。

 婚約者たちは全員いい所のお嬢さんだから、世話をする人間が必要になる。

 領地に来るのは婚約者だけでなく、その世話役も含むのだ。世話役は信頼関係の面でグラメ村の人間が採用されることは無く、婚約者本人と付き合いの長い者が選ばれる。


 1人あたり3~5人は連れてくると予想され、平均4人としても合計50人も来ることになる。

 何人かは減らされるかもしれないけど、身の回りの世話以外をする人間、例えば庭師や馬車の御者などまで呼ばれると、最悪100人近い増員が予想される。

 そんなにたくさんの人が来れば今使っている俺の屋敷はキャパシティオーバーになり、全く持って敷地面積が足りない。


 それを見越して新しく屋敷を用意してあげようと、陛下や公爵の爺が気を利かせてしまったのだ。

 人も石材も木材も全部手配され、半年かけて新しい屋敷を作りますときたものだ。「有難迷惑」という言葉について小一時間ほど語ってやりたい。


 その間の食事も全部持ち込み? 断る理由をこれでもかと削ってくれるね。村を見られた段階でもう遅いんだけど。

 俺に作っておけと言わない陛下たちの優しさに涙が出そうだよ。

 その優しさに、空気を読む力も足してください。マジで。



 はぁ。

 来ちゃったものはしょうがないし、こいつらが見ている景色を弄ろう。見えている物を正しく認識できず、例えば温室が目の前にあってもそれを認識できなくなるような。ドームも温室も、何も見えないようにしてしまうのだ。

 いや。温室は作りかけと思わせて、数年後に公開する予定と伝えさせるか。変な建物を作っていて、それがどんなものかはよく分からないと言わせておこう。


 あとは途中でこっそり抜け出す馬鹿が出ないよう、罠を仕掛けておくかな。

 寝る前に村の門を閉ざしておけば大体の脱走者は防げるし。それでも突っ走るお馬鹿さんには痛い目を見てもらう。



 余計な仕事ばかりが増えるね。

 これで悪意が全く無いっていうのは信じがたいけど。陛下も爺もこっちに良かれと思って動いているから性質(タチ)が悪い。


 陛下たちにしてみれば、俺はまだ道理の分らぬ子供でしかない。俺の性格上、断れない状況を作りこの世界の常識に合わせた正しい判断をするように迫る。

 貴族だからこの程度で済んでいるけど、そうでなければもっと酷い状況なんだよな。俺の人格に対し配慮する理由が無くなるから。

 その時はこの身一つの俺だから、さっさと別の国に逃げたわけだが。

 うん。俺の性格を把握されているという訳だ。どこまで俺の領分に踏み込めるかを、俺が逃げ出さない程度に見極められてる。


 俺は陛下たちが作業員の為に用意した食材のリストを見てため息を吐く。

 そこには俺が欲しがりそうな食材が混じっており、俺が手を付けても良いというお墨付きがある。無論、持っていった分を補充する義務が発生するわけだが。


 本当、嫌な所を突いてくれる。

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