荒療治②
現在サウボナニ島にいる。
船団を作るために50人もの船大工とそのお手伝いたちが働いている現場にいるのだ。
冬の間に少しでも作業が進むように、俺達は材木の乾燥を始め魔法によるお手伝いをしようとしている。その為に来たのだ。
「「お父様、できました!」」
「うぅ、お母さん……」
そして俺の傍には材木の乾燥で活躍する幼くも大人びた娘二人と、母親から引き離されて泣く事しかできない幼い息子が一人。
今回は嫌がるアーサーも無理矢理連れて来てみた。母親の方は説得済みです。
自立心がどうとかではなく、互いに悪い意味で依存しているようだったので、引き離すのが正解かなと思い実行してみた。
泣いているだけのアーサーを見るとたぶん正解だったと思うよ。
逃げる先を必死に探すその姿は「このままじゃ駄目だろう」と思うしかない。普段も離れる事はあるんだけど、それでも「近くにいてすぐに会える状態」と「遠くにいて自力では会いに行けない状態」では安心感が違う訳だ。後者は絶望しかない。
現代なら幼稚園に通わせたら一日中泣いているようなものだが、保育士さんへの嫌がらせに近い。
ほんの数日ではあるが、その間にここで立ち直れれば、多少はマシになるはず。
心を鬼に、と言うか平常通りにして、アーサーが立ち直るのを待とう。
母親は傍に居ないけど、父親は傍に居るぞ?
どうでもいいけど、「立ち直る」って「立直」って言いたくなるな。
船団を効率よく作るため、船の製作はモジュール化を意識して作業させている。
ある程度パーツを組み合わせて形を作り、それから本体に組み付ける作業手順だ。本来はいきなり本体に組み付けていくのが手順である。
モジュール化のメリットは、大人数での作業を可能にする事と品質の一定化が挙げられる。
効率が良くなる反面、場所を多くとるのがデメリットだが、それは今のサウボナニ島にとって大した問題とならない。
そしてメリットとはちょっと違うが、広げられた作業場と言うのは、見ていて格好いいというか、どこか男のロマンを感じさせる。
ロボット制作現場的な、機械的な匂いがするのだよ。
アーサーも背負って連れてきたが、泣いているだけの子供にはこの良さが分からないようだ。
いや、この男のロマンはロボアニメを観るなどの訓練を施さなければたどり着けない領域なんだろう。目を輝かせてアニメを観た経験の無いアーサーに分れと言う方が酷だったな。
ま、今は体をくっつけた状態で俺が色々と魔法を使い、魔法を体感してもらうのが大事かな。
アイナやミーナはそれで魔法を覚えていったんだし、アーサーも何とかなるだろ。




