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メタンガス(後)

「お父様、メタンガスってどんなものですか?」

「オナラの仲間で、臭い空気の事だよ。火を付けると燃えるんだ」

「オナラ、ですか? オナラって燃えるのですか?」

「そうそう。体に良くないから吸っちゃだめだよ」

「はーい」


 子供にガスについて聞かれたので、分かりやすい例えで説明してみる。

 メタンガスはオナラと言い換えてもいいぐらい似たようなものなので、なんとなく分かってくれたようだ。正直、空気やメタンの説明なんて専門的な言い方の方が言い易いぐらいなんだよな。

 特に子供相手だと出来るだけわかりやすい言葉に置き換えないと通じないし、大変だ。





 ガスの有効活用だが、難しく考えるのは無駄だと考え直す。

 これは俺にとって初めての試みである。だったらまずはやってみて、足りない物については後で考えるしかないのだ。


 という訳で、ガスは配管を通して近場の畜産センター付近で燃焼させ、湯を沸かすようにしてみた。

 メタンガスの比重は空気よりも軽いので、まずは堆肥の上にガスが溜まる場所を設け、そこからファンを使って燃焼部に送るようにする。


 ファンの回転は電動である。外部に風力発電ユニットを設置してその電力で動かすようにしている。

 こういった動力の伝達において、電気は気密性の維持が楽で助かる。

 ただ、電気だけに火花とかでメタンガスが爆発しないかが心配だが……そこは考えてもしょうがないと割り切ろう。念のため、ファンは複数設置しておいたけど。



 そして試してみたガス湯沸かしだが、驚くほど効率が悪い。

 そしてその理由は3つほど考えられる。


 ガスの発生量が足りない事。たい肥から発生するガスの量が少ない訳だ。燃料が少ないから火も小さくなる。

 ガスの燃焼部への供給が足りない事。これは風力が足りてないからだ。磁石やコイルの性能が悪く、モーターの出力が低いようだ。

 最後に、ガスの質が悪い事。たい肥から発生しているガスはメタンガスだけではないので、余計な物まで燃やしていると思われる。


 一つ目についてはガスの発生量を増やすことで対処可能。最初は実験的にガスの量を減らしていた面もあるので、全力で、たい肥からガスを集めれば済む話だ。

 二つ目はモーターの再設計かな。鉄の純度は問題ないのだし、電力量に見合ったモーターを設計すればいいだけだ。あとは電力を安定させるためにコンデンサを組み込む事か。

 三つ目はガスを一旦、たい肥の上に溜める事で空気や他のガスを分離するようにしているが、それだけでは不十分と言う事だろう。これ以上の純度上昇はどうやればいいのか考え付かない。



 考えられる問題点に、それぞれ出来る事をやってみる。

 設備が当初の予定よりも大幅に増設されて大規模になってしまったが、それも含めて実験なのでコストや手間は諦めよう。


 その結果、コストに見合うかどうかは横に置き、それなりの火力を安定して得ることができるようになった。

 残る課題はガスが発生する期間が限定されるため、複数の糞尿処理施設をローテーションする様に、メタンガスが発生している所だけを選んで使うようにしないといけない事か。


 こればっかりはどうしようもないので、人を使って確認していくしかないかな。

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