大灯台建設(見送り)
俺による妖怪セカンドの品定めが終わると、話は大灯台の方に移る。
爺さんにしてみればむしろ自分の所がこの話を持ち掛けるべきであって、そこで先を越されたのには残念そうな顔をしていた。
なにせ、港湾都市に大灯台というのは考え得る最高の組み合わせである。それが陸地の商業都市に先を越されるというのは何事か。爺さんの嘆きはもっともだ。
俺自身は、まだ大灯台を作ると本格的な約束を結んでいない。
しかし話を持ち出した人間が優先されるのはお約束であり、個人的な付き合いを理由に順番を飛ばすのはマナー違反になる。
爺さん本人から話を持ち掛けられないのも後回しする理由だけど。
こういった交渉は全部、息子本人にやらせるらしい。
「税の優遇は、さすがに出来んな」
「ああ。俺達は公爵だが、税は国の定めるものだ。財務担当の領分だけに、要望は出せても確約はできねぇ」
あと、大灯台建設の話がまとまらなかった理由、報酬の件を話してみると、爺さん達もそろって難しい顔をした。
今回の問題は、王国側からの依頼ではなく、一貴族からの願いであると言う事。
どこかの貴族に肩入れするだけでは他の貴族から不満が出るというものだ。
製鉄技術に関しては国が主導する国全体を潤す儲け話なのでいいんだけど、大灯台は特に都市一つに恩恵をもたらすだけなので駄目だと言われる可能性が高いらしい。
公爵領から国に金を支払い、俺の領地の税を優遇させるなら、「直接俺に金を支払い働いてもらえよ」と言われて終わりになりそうだとか。
何とか金銭で話をまとめたい爺さん達だが、俺の側は今までの功績による収入でもう金を欲しがる理由が無いし、むしろ何らかの優先購入権の方が有難いぐらいである。
そこに食い込める手札が息子たち同様爺さんらにも無く、大灯台建設はお流れになった。
今後、別ルートで交渉をするだろうが、その時までに何か面白い物を探してきてくださいってわけだよ。
なお、爺さん側から「米」の入手をちらつかされたが、今回は現物が無い上に俺の所で栽培できるかどうか未知数なので断っておいた。
米作りの難しさはよく知っているし、俺の領地の気候を考えると失敗するとしか思えない。
もし交渉カードにするなら米作りのプロの手配もお願いします。
米が欲しい事と、米が交渉カードとして使えるのは別という話だ。
グラメ村に戻ると、メシマズ村からの定期便が大量の木材を牽引しているのを見つけた。
最近は他所の村から木材を買うようにしている。
魔法を使い冬の前に木材の水抜きをして、炭を量産しようという魂胆である。
炭そのものは加工賃が加わるために高価になるが、その前の木材の状態ならお安く買えるのだ。炭と比較すればという前提条件が付くが、他の村で低品質な炭に加工された後に買うぐらいなら、自分の所で最初から炭にした方が効率がいいという理由もある。
炭は値上がり傾向にあるし、流通量が減っているから、こうやって確保しないと在庫が心許ないのだ。
爺さんらも炭を交渉カードに出来る事が分かっていても空手形は使えないし、大灯台建設の代金と考えると恐ろしい量の炭を用意しないといけない。
他に使える手札を用意できるなら報酬の一つに落とし込めるが、それ単品では意味が無かったのである。
船で運ばれた木材はトロッコを使い材木置き場に運ばれる。
乾燥待ちの木材は大量に積まれているが、秋の恒例、製鉄を行った後なので炭の在庫があまりない。
生乾きの木材は燃料として使いにくいため、水抜きをできる魔法使いは重用される。
グラメ村の場合は俺に加えてミーナがそれをできるので楽なんだがな。
さぁ、冬になる前に一仕事しますかね。




