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ガス気球

 水素というのは、魔法を使えば簡単に手に入る。

 水が水素と酸素で出来ている事は一般的な常識であり、水を分解する手段さえあればいいだけなのだ。魔法使いなら、その事を知っているだけでどうにでもなる。



 俺は集めた水素を貯め込んだ、大きさの違ういくつもの気球を浮かせると、それがどれだけ長持ちするか観察することにした。

 浮かぶ気球の持続時間次第では、熱気球ならぬガス気球を実用化するつもりでいる。


 ガス気球はその運用の難しさからこれまでやってこなかったが、最近になって外で出回る炭の値段が上昇傾向にある。まだ昨年比2割増し程度であったが、原因である熱気球の製作者として今のうちに対策を立てておこうと思ったからだ。

 熱気球に頼るようになった為に炭の必要量が大幅に増大、結果として経済に悪影響が出ているのだ。


 炭の生産量が上昇すれば状況は改善されるが、炭の増産を行っていてもこれなのだ。炭不足が続けば冬には凍死者が出かねない。

 それはあまり嬉しくない話だ。

 俺の所も製鉄で大量に炭を使うし、暖房用の炭は他から買う事もあるからな。他人事じゃない。

 炭はうまくやれば保存がきくので、ストックは1年分あるけどね。





 気球の持続時間だが、使われた布材の質によるばらつきはあるものの、基本的には大きい物ほど長持ちする。

 ガスの保有量は体積で、ガスが抜ける量は気球の表面積に比例するなら、体積(立方根)と表面積(平方根)の関係により大きければ大きいほど有利になるからだ。

 細かいことを言えばその他の要素も絡むとはいえ、こういった基本原則は地球と同じだ。


 なので、実際に気球を作った時に得られるであろう数値を計算して調べておく。

 多少の誤差を考慮、というか2割ぐらいは予想外になるかもと浮力の上方修正でマージンを確保しつつ、実際に作る物の計画を立てる。



 考えているのは、熱気球の補助としてガス気球を使う方法。

 本来のガス気球は弁を付けてガス抜きができるようにすることで上昇と降下をコントロールするようになっている。

 しかし、再上昇にガスの補充が必要な事を考えると、空中でそれが出来るのかという問題を思い付く訳で。ガス単独での気球は無理じゃないかなと思っている。



 ガス気球と熱気球の併用も、使っているのが水素だし、ヒンデンブルグ号のような爆発事故を思い浮かべてしまうけど。

 とりあえず、研究だけはしておくよ。

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