表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
524/550

子供の喧嘩(後)

 「一応は」後継者候補筆頭であるアーサー。

 その育成にはそれなりの手間をかけている。

 ただ、肝心要のアーサーは俺が嫌いであり、親子の仲はあまり良くない。

 だから幼馴染になる同年代の子供を用意したり、世話を焼くお姉さんを配置したり。まぁ、領主としてかなり人手を割くように指示しているわけだ。


 手間をかける事、時間を割く事。

 それらを行ったところで子が親に懐くとは限らない。親の心子知らず、親の愛とは子には分かりにくいものなのだ。

 アーサーは未だ、俺を敵視している。




 屋敷の中に入ると、ユリアに抱かれながら声を上げて泣くアーサーがいた。

 3歳児なので男だろうと泣く事を咎める気はないが。


「盛大に言い負かされたなぁ、アーサー」


 傷口にいきなり塩を塗ってみようか。


「うー! うー!!」


 突然現れた俺に、キツイ現実を突きつけられ難しい顔をするアーサー。何か言い返したいのだろうが、声にならない言葉を発するだけで意味のある言葉を紡げないでいる。

 まぁ、ここですぐに言い返せるようならさっきみたいな事にならないだろうけど。


「さっきアイナが言っていたことは間違ってないぞ。長男ってだけで次期領主は決まらないからな」


 そんな訳で、何も言い返せないアーサーに更に追撃。


「魔法が使えないなら、領主は諦めるしかないぞ。

 俺の後継者は魔法使いだって、みんな思っているからな」


 ただ、これが全部事実である。

 俺の後継者が魔法使いに限定されるのは、アイナが産まれた時はともかく、アーサーが産まれた段階で確定してしまった。

 二人も大きな魔力の持ち主がいるというのに、どうして他のだれかに継がせるという選択肢があるというのだろうか?


 爺さんは最初こそアイナに興味を示さなかったが、アーサーが魔力持ちだったことを知るとアイナをアーサーに何かあった時の予備と考えるようになっていた。

 俺の後継者に、俺のような魔法使いがいれば国としての利益はとても大きい。将棋で言うなら金銀飛車角を余分に持っておけるようなものだ。そうでなくとも俺の抱える弱点、「1人しかいない」へのフォローになる。


 貴族家の当主以外への直接命令権は、王国側には存在しない。当主を介しての間接的な命令権はあるが、それではいろいろと効率が悪い。

 だからアーサーが魔法使いとして当主になるか、アイナが事実上の(・・・・)当主になる事が望まれている。



「ま、俺の後継者、領主になるかどうかなんてどうでもいいんだ」


 適度かどうかは知らないが、ここで視線の高さを合わせて「領主なんてどうでもいい」と言葉を翻す。


「男が女に負けたままで、引き下がれるか?」


 今度は男尊女卑の常識を持ちだし、プライドを刺激する。

 男の方が偉いのに、女に負けたままでは恥だと馬鹿にしてみせる。


「男なら「立派な魔法使いになって見返してやる」ぐらいの気概が無いとな」


 俺はアーサーに向けて拳を突き出し、口の端を持ち上げて笑みを見せる。馬鹿にするようなそれではなく、「出来るか?」と試すような笑顔だ。



 アーサーは最後まで俺に何も言い返せなかったが、泣き止んで見せるぐらいの気概は見せた。今はそれで合格としておこう。


 俺の言葉が届くほど、アーサーは成長していない。

 だが、幼子相手に急ぐ気もないし。



 俺は立ち上がり、言うべき事は言ったとばかりにその場を立ち去る。

 子供の育成は難しいね。パターン化できない部分が多すぎる。


 ま、アーサーの今後に期待、かね?


 でも、いざって時のために別枠の次期当主候補を見繕っておかないとな。

 後になって慌てたところでどうにもならないし。

 そこはもう、アーサーに期待するかどうかとは別の話なのだ。アイナは魔法使いとしてだけじゃなくその他も優秀だし、俺がそっちに期待するのも仕方のない事だよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ