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子供の喧嘩(前)

 秋になった。

 畑の小麦などが黄金の絨毯に見える、そんな時に親としては微笑ましい程度のケンカが起きた。


「ぼくはじき当主なんだぞ!」

「ロクに魔法も使えない奴が当主になれるワケないでしょ!」

「おんなのくせに、生意気だぞ!」


 アイナとアーサーの口論である。

 何があったのかは知らないが、俺が来た時には当主がどうこう言いながら口喧嘩をしていた。


 とりあえず、暴力を振るわない喧嘩は大いにやっておけというのが俺の教育方針の一つである。アイナが魔法を使わないので止める気も無く、こういった場面でしか出てこない本音トークは貴重だし、と観戦することにした。

 我ながら、酷い親である。



「当主は男しかなれないんだぞ! だからぼくが次の当主だ!」

「アンタみたいな奴に任せるなら、お父様なら他のだれかにやらせるわよ!」


 アイナ、半分正解。

 基本は長男に家を継がせるんだけど、アイナにいい男を婿入りさせ、家を継がせるって選択肢もある。

 アイナ本人に継がせるのは、表向きは無理だしな。事実上の当主に据える事は簡単だけど。


 そしてアーサー、男だったら馬鹿でも当主になれるわけじゃないぞ? 馬鹿な当主は家にとって害悪だし、領地を守る能力が無いと思ったら外に婿だと言って送りつけ切り捨てるつもりだからな?



 しばらく眺めていたが、こういった口論で男が女に、一つとは言え年上に敵う道理はない。

 言い負かされたアーサーは泣いて母ユリアの所に走り去り、不完全燃焼のアイナも苦虫を噛み潰したような、怒った表情のまま涙目で動けずにいた。


「おつかれー」

「おおお、お父様!?」


 終わったのなら話しかけよう。アイナに声をかけると、アイナは俺がいた事に気が付きびっくりして怒っていたような表情を引っ込めた。

 そんなアイナを俺は抱き上げ、頭を撫でる。


「よーし、よしよし。喧嘩で魔法を使わなかったな。偉いぞー」


 先ずは褒めるべき点をしっかり褒めておく。

 姉弟で喧嘩をする事を悪いと思っていない俺は、喧嘩程度で魔法を使わなかった事を褒めておく。こうやって魔法を使わない事を褒めておかないと、つまらない事に魔法を使うようになって歯止めが利かなくなるからな。そのうち気に入らない奴を魔法で殺すようになったら親として目も当てられない。

 相手が子供である事、それを考えれば褒めるに値する自制心だと思うし。



 喧嘩の理由も聞かずそのままアイナを褒め倒した俺は、アイナに昼寝でもしておくように言うとユリアの所に向かった。

 アイナには聞かなかったけど、やっぱり喧嘩の理由は聞きたいし、アーサーの様子も見ておきたい。


 たまにはアーサーの親として動こう。

 あと、当主として次期当主候補も育てないとな。

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