温室作り
お馬鹿の処分が終わり、他の皆は平常運転。
一人抜けた穴は他の奴に頑張ってもらうとして、それでもノルマの分だけ働かせる。……一人減った分として、ノルマを少し減らしたけどね。
いつも通り働くみんなを横目に、俺は新しい仕事に取り掛かる。
そう。俺は温室を作るのだ。
温室と言っても、ビニールが無いからビニールハウスは作れないのが理由で、これは消去法による選択だ。
温室は金属フレームでガラスを固定し壁にした建屋のことで、その用途はもちろん室温を上げる事だ。今いる場所より暖かい地方の植物を育てるのが目的だ。
他にも受粉をコントロールする目的でも使われるが、今回はそちらの用途を考えていない。
作る場所は畜産センターと村の間を使う。
畜産センターは臭いを意識して村から離れたところに作ってあるけど、その間には防風林ならぬ防臭林ぐらいしか無い。だったら壁になる建物を置き、臭いの侵入経路を物理的に減らしてしまおうという魂胆だ。
まずは土地の確保という事で雪を融かし、ぬかるみが無くなるまで地面を乾かし、最後に上から圧力をかけて整地する。
平らにするだけでなく、その後の事も考え水平を取る。僅かに水を流し込み、流れ込む場所が無いかをチェックするのだ。傾きがあればその都度調整し、全体のバランスを取る。
土地の平衡が出たら今度は≪石壁≫によるフレーム作りだ。
鉄では酸化などの問題があるけど、石ならその心配もない。強度の方が心配だけど、そこは厚みでカバーする。
大きな円を描く様に「H」型のフレームを2m間隔で作っていく。完成形は円筒の上に半球を置いた、塗り薬のキャップのようなものをイメージしている。
薄い所でも3㎝以上の厚みがあるように調整して強度を確保。あとは間隔を狭めることで負荷を分散する。もちろん地下5mまで埋め込んでおくのも忘れない。全部の作業が終わってからになるが、補強材も用意しよう。
天井部分は壁が完成してからだ。先に作るとうまく固定できないだろうし。
ここまで出来たらあとはガラス板をはめ込むだけである。
ガラスは工業製品のごとく形が均一になるように、熔かしたガラスの素を鋳型にはめて成型している。生産速度はそれなりだけど、何かあった時の作り直しが簡単になるので手抜きはしない。
数百枚も正方形のガラス板作るとさすがに飽きてくるけど。そこはもう考える事を止めて機械のようにやり続けたさ。
なお、ガラスの材料は海岸の砂だ。それを融かして遠心分離器の要領で不純物を取り除き、完全に透明な物を用意した。これは大雑把にやっても大丈夫なのでとても簡単だったよ。
出来たガラスをフレームに填め込み、半径おおよそ57m、高さ20mの円柱が出来た。
使用したガラス枚数はここまでで1800枚。後半、俺は半泣きだった気もする。二重にすることも考えていたけど、もう嫌だ。やりたくない。
最後は細かく作るのが嫌になったので一体成型の半球のお椀を作り、そのまま上に乗せてすぐ下のガラスと一体化させた。
手抜きと言うこと無かれ。当初の予定だとアーチを作って細かくガラス板を入れるつもりだったけど、もうガラス板を作るのは嫌なんだ。勘弁してください、ほんと。
こうして出来あがった温室だけど、終わってから日の射し込まない北側だけガラスにしなくても良かった事に思い至り、俺は膝から崩れ落ちた。
むしろ日の光を熱に変える為にはその方が良かった為、無駄というより失敗である。全く考えが足りていなかった。
仕方がないんだ……。
俺の知っている温室はどれも全面ガラス張りで、特定箇所だけガラス以外とかそんな事が無かったんだから!
今回の教訓。
地球の知識を思い出して再現する前に、その意味を自分なりに考えようという事。
地球とこっちじゃ条件が違いすぎるんだから、そこに踏み込んだやり方を探すべきだったのだ。
もう、ガラスは二度と作りたくない。




