試作グライダーの問題点
機密保持の名で村人を入手した俺だが、彼らの受難は今回限りという訳では無い。
シュクレ村に着いてからも実験は続けられる。
航空機の実験任務に就いた教導隊という扱いに近いので、今後も使い倒される予定だ。
なお、シュクレ村の住人に対しては特に何の制限も受けない。
彼らも航空機というか滑空機の姿を見るのだが、基本的に村から動けないからだ。彼らが情報を漏らす可能性はほとんど考えられていない。
……ちょうど王都観光を計画した男がいたが、それについて気にしてはいけない。
滑空機、グライダーで空を飛ぶ彼らに対する俺の評価は、鳥人間コンテス○である。
手作り感あふれるグライダー――実際に手作りである――で飛んでいる姿は見ていて面白い。同じことを何度もしてデータを取っているが、毎回ハラハラさせられるからだ。上手くいったときは心から安心してしまう。
特に実戦投入不可能という点が鳥人間コンテ○トを思い出させるし。
現状、グライダーは実用品ではない。
まず、着地の問題がある。
普通にフォロー無しで着地させたら、たぶんも何も、その衝撃でパイロットの足が折れるからだ。
空中分解したパイロットだけではない。実験の参加者全員が俺の保護対象となっている。
次に進路の問題。
パイロットの体重移動で旋回しようにも、上手くそれが出来ないでいる。ついでに強風にあおられたら一瞬でバランスを崩す。最初の実験ではそんな事も無かったのだが、風の所為でパイロットがグライダーから落ちる事もあった。
一回だけ姿勢制御翼と称して尾翼もどきを追加してみたがあまり効果は無かった。
あとは耐久度の問題。
着地の衝撃が凄い事もあり、グライダーは2~3回の飛行で駄目になる。これは1回ごとにメンテナンスをしても駄目なのだ。木製フレーム部分に入ったダメージは何をやっても戻せない。部品交換が必要だ。
その昔、動画で見た時はそんなに危険そうに見えなかったのに……。
これらについては俺の知識の引き出しが足りない為に試行錯誤するしかなく、技術者連中に頑張ってもらうしかない。
航空力学とかも俺はあまり詳しくないし、そちらも併せて頑張ってほしい。
たしか濁らせた水槽で空気の流れを視認するんだっけ? ガラスの水槽を造らないと駄目だな。




