表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
516/550

時間の共有

「子供の世界は狭いさね。アンタが今まで見せた魔法があの子らの『常識』なのさ。

 だから出来て当たり前だと思ってるんじゃないか?

 アンタも大概だけど、本気で育てればアンタ以上の魔法使いに育つだろうね」


 4歳児の魔法の才能に恐れ戦く俺は、経験豊富なサヴに相談をすることにした。

 今まで多くの魔法使いを見てきた彼女なら、これがどれぐらい異常なのか判断できると思っての事だ。


 そのサヴの話では、子供の成長が異常なのは俺のせいだと言う。

 娘たちにしてみれば俺が魔法使いの基準だというのだ。

 俺が使う魔法を見る事で魔法習得への道筋を知り、最短コースを更新しつつ、俺を越えていくかもしれないと予言する。



 そう言えば、思い出したことがある。


 フィギュアスケートの世界ではその昔、トリプルアクセルという三回転半のジャンプができる事が一流の証明だったという。それだけトリプルアクセルを飛べる選手が少なかったのだ。

 しかし、俺がジジイになった時には四回転半のクワドアクセルがトップ選手の常識になっていた。中には五回転半すら成功させる選手もいた。

 三回転半への道筋が見つかった事、道具が良くなった事、様々な要素が絡み合っているとは思うが、常識とは進化する物だった。


 つまり、俺も魔法使いとしてはいずれ老頭児(ロートル)になる?


 ロートル、過去の遺物か……。

 あまり考えたくない未来だな。生涯現役とは言わないが、元気なうちは役立たずというか2軍扱いにはなりたくないものだ。





 今回俺がサヴのところ、シュクレ村に来たのは魔法云々だけではなく別の用件もある。

 鐘楼の設置である。

 プルヌス村は道の途中なのですでに設置済み、あとはシュクレ村だけだと鐘楼を建てに来たのだ。



「んー。時報かぁ」


 鐘楼を設置し、夕方の人が集まる時間に鐘の音色と伝達する情報の関係を説明した。

 それを終えた後に、サヴは難しい顔をしていた。


「何か気になる事でも?」

「ああ、あんまり細かい事を決めると、それが揉め事の原因になりそうで怖いさ」


 サヴが難しい顔をしていたのは、現在時刻が共有される事で時間にうるさい奴とルーズな奴との間でもめ事が起こりそうだというものだ。

 今までは早く来たのか遅く来たのかが分からなかったが、これからは時間通りに来たかどうかを鐘の音で判断できるようになる。そうなるとこれまでウヤムヤにされていた問題に判決が下され、喧嘩に発展しかねないという話である。



 俺としては時間にきっちりした奴の方が好ましいし、そっちを味方したい。

 だが世の中は正しいだけではうまく回らず、時には玉虫色の回答も必要になる。


 今回の鐘楼の件は玉虫色の回答を許さない風潮の一歩になりかねないとサヴは嫌な顔をしたのだ。



「だけど、時間を共有できた方が何かと都合がいいだろ? デメリットよりもメリットが大きいと思うけど」

「そうだけどさ、あんまり面白い事にならない気がするさ」


 俺は利点を強調するが、サヴの表情はあまり良くない。説得力が足りないようだ。



 その後の話として、シュクレ村で時間にいい加減だった奴ときっちりした奴が揉めて、いい加減だった方に罰が下されたらしい。

 サヴの予想は当たっていたわけだが、その後は時間にいい加減だった奴の生活が見直され、遅刻も無くなりちゃんとするようになったそうだ。


 ちょっとは揉め事や混乱が起きたようだが、それでも鐘楼効果で全体的にいい方向に向かっていると思うよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ