ビオトープ・ファースト
新しく人工島・セカンドを作ったのはいいが、ファーストの様になるには時間がかかる。
ファーストは年単位が経過し、すでに一つの生態系を作り上げているからだ。
ファーストはビオトープのような物だ。
海中においては柱にこべりついたフジツボなどにより、何層もの皮ができている。更にそれを土の代わりにした海藻が生えたりして、海藻を寝床にする魚が棲みつく。
その魚を目当てに別の魚も寄ってくるし、光が届く所にある場所は恒常的に魚がいる浅瀬に近い環境である。
地上では盛られた土の上に木々も生え、どの程度に成長するかは分からないが小さな林ができつつある。
草も生い茂っているし、俺が放り込んだからでもあるが、ミミズがウネウネしながら土を柔らかくしている。
そんなミミズを餌にする鶏たちは地上の支配者である。人間がいない事の方が多いファーストには、彼らに勝てる生き物がいないのだ。鶏たちはこの世の春を謳歌している。
もっとも、たまに訪れる人間により卵を奪われ肉にされ、食卓を彩るまでが彼らの運命なのだが。
水の方も雨水を蓄えるようにしているし、小さな池もある。
一辺2㎞の六角形の上に川を用意することはできないが、水場があれば生き物は生きていける。
呼び水という言葉もあるが、そのおかげか俺とは別ルートで新しい生き物も島に届いている。
植物の種は死という概念が薄く、成育可能な特定環境下に置かれればそこで芽吹くようにできている。
虫などは死んだとしても体内に蓄えた卵を遠方でふ化させることがある。数日間の補給も無しに飛び続ける事も可能だ。
そうやってファーストに辿り着いた生き物が、他の生き物がいないからと一気に繁殖するのだ。
植物の方はともかく、虫の方は鶏の餌になるので特に気にしてはいない。
その植物にしても、タンポポのような花を咲かせているが特に毒性のある物ではなかったので警戒はしていないな。逆にタンポポの様な花なので根っこを焙煎してコーヒーに出来ないかと期待している。
そうやって新しい生き物を受け入れつつ、年を経て少しずつファーストの環境が安定していく。
今はまだ新顔も多いわけだが、そいつらとバランスを取りつつ、新しい楽園になっていくだろう。
もしもブラックバスやブルーギル、ミントや竹のような生き物により問題が起きれば排除に動かねばならないが、それまでは放置である。
100年先に、ファーストはどんな島になっているんだろうね?




