人工島・セカンド
船を増やすのに、サウボナニ島はいい環境にある。
王国に内緒で動くなら外界から隔離されたあの島はうってつけなのである。
それに加えて人員増加による村の人口変動のごまかしも出来る。
多少違和感を感じようと、誰が村にいたのかまで覚えている人間など外にはいない。変わらない人口によるカモフラージュは有効だろう。
まぁ、グラメ村はともかく他の村にまで足を延ばす奴など居ないのだが。
島で船団を作るついでに、島からさらに先に新しい人工島を造ろうかと思う。
島から1000㎞先には島が無いようだし、補給路の確保は大事だと思うのだ。
最初に作ったあの人工島を一つ目だからと安直にファーストと呼び、二つ目をセカンドと呼ぶことにした。
そのうち正式名称を決めたいと思う。とりあえずの仮称だ。
やる事はファーストと同じ、支柱を立ててその上に板を置くやり方だ。
海底火山はもうやらない。
あれをやると環境への負荷が酷いからな。
環境保護とか綺麗事ではなく、単純に島への悪影響が読み切れない。
航路の方も同様だ。これから海に出ようというのに無駄に海を駄目にする理由は無い。
前回はそれが必要でその方法が最善だと思ったからやったのだ。
もっと効率のいい方法があるのに、あれは無い。
やる事が同じなら、かかる期間その他も同じである。
ただ、今回は後学の為にアイナとミーナを連れて行く。アーサーはお留守番だ。その為、食事については船による補給も要請する。
手間はかかるがいい練習になるので頑張ってほしい。
ついでに鶏などの運搬も頼んでおいたよ。
海の底での作業では、二人は初めての深海の暗闇に怯えて必死に俺にしがみつく。
単純作業の繰り返しに飽きるかと思えばその作業時間を使ってお喋りに興じる。二人からは新しい魔法を知るたびに次の質問がポンポン出て来る。
喋っているのは怖さを紛らわせる為だろうが、こちらもいい暇つぶしになるのでそのまま付き合わせた。
セカンドに船が来れば船の上で子供二人が走り回り、船員の目を和ませた。
彼らが来たのは5日目だったので、セカンドの仮組みがおおよそ終わったところである。子供を連れていても魔力的な負担はさほど増えなかったので、進捗は悪くなかったのだ。
必要な物資を受け取り、船員と一緒に二人を島に帰らせようとしたが、何故か二人ともセカンドに残った。
まぁ、俺も暇をしないので助かるが。
セカンドの土地をファーストと同じところまで広げ、全てが終わる頃には一月ほど経過する。
後半は普通に家を建ててそこで暮らしていたので、そこまで不便な生活ではなかった。
途中でもう一度だけ船を来させて物資などを補給したから、鶏が島を走り回る程度に環境は整っている。
補給基地としてはちゃんと使えるだろう。
このセカンドはグラメ村から約3000㎞は離れた場所だ。
俺が望む物はおそらくさらにその先にある。
今回の人工島増設で、そこまでたどり着けるかどうか。
まだまだ先は長いだろう。




