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ギルド③

 王立ギルドの計画は爺さんから賛同を得られなかった。

 つまり、要求する内容が多すぎてかみ合わず、現実的でなかったのだろう。


 爺さんがギルドが出来てからその後どうなっていくかについて分かっていれば何らかのアドバイスや修正案を出してもらえたかもしれないが、さすがに無い物ねだりの他力本願は駄目だろう。

 状況を整理して、切り捨てる部分を探さないといけない。



 まず、ギルドに求めるのは技術の継承だ。

 その結果として民間に力を持つ者が出てくる可能性は大いにあるが、そこは問題ではない。長子継承が否定される事に難がある。貴族の血統支配を否定することに繋がるからだ。


 才能が継承されないという事は貴族も民衆も分かっている事だが、それでも統治システム維持に長子継承は基本思想として残しておかないと不味い。

 俺が体制側の人間であることも関係しているが、王家を転覆させかねない思想を蔓延らせるのに、爺さんから協力してもらえるわけがない。





 では、一族の中から最も優秀な者を後継者にするシステムはどうだろうか?


 そこで思い付くのは段位認定とか技能検定である。

 特定技能を持っている事を優秀さの証とする事で継承者を決める。


 この場合は一族内で骨肉の争いをさせることになるが、基準さえはっきりしているなら競争の原理でより良い後継者を見出す一助になると俺は踏んでいる。

 例えば鍛冶師だが、良い金属を見出す眼を持っていない奴や火の温度管理もできない奴に後を継がせるのもどうかと思うし。


 職業ごとの基準は様々だが、どうせギルドを作っても同じことが必要なのだ。

 これなら分野を一部限定し、国が保護したい職種を優先すれば対応できるのではないだろうか?



 あとは分業をどうするかだよな。


 今の職とは一つの家で完結している事が前提となる。例えば料理屋だが、帳簿、仕入れ、調理、配膳、会計、食器洗いとやる事を分化してやった方が効率が良い。病院の外科や内科といった専門家の分業も似たようなものだ。

 鍛冶師であれば、例えば目利きのスペシャリストなどを放置すると損失に思えるのだが、単独の技能だけでは食っていけないのが今の職人たちである。

 なので総合職人(ジェネラリスト)専門職人(スペシャリスト)を分けて評価できるシステムにしないといけない。


 日本の資格試験は実技と学科だが、学科はいくつかの分野ごとに点数を一度計算し、その全てで一定以上の点数を取り、なおかつ全体で既定の点数を取らないと合格できない仕組みになっている。

 基本は同じ思想でいいとして、スペシャリスト確保のために特定科目で規定値以上の点を取れば専門職人として認定し、全体で平均的にいい点を取れば総合職人と認定すればいいな。


 認定には賞状を贈って国が認めた職人であると喧伝する許可を与える。箔を付けさせるわけだ。





 これなら爺さんの説得も(かな)うかな?

 そう思って提案してみたけど。


「まだ、難しいの。

 一定の基準を定めることができるかどうかという視点が欠けておる。何度も挑めば慣れて試験をクリアすることも叶うだろうが、技能の継承に繋がるのとは趣旨が違わないか?」


 ああ、うん。

 試験対策がバッチリでも実務ではまた別の才能が要求されかねない訳か。


「しかし、全てに対応することは不可能。ならば何が出来たという保証だけでも才を測る基準として機能するのでは? 本当に才が無い者は別の道を選ぶといった、最低限の(ふるい)としては機能しますし」

「む」


 試験特化に陥る事の危険性はあるけど、最低ラインの技術を持っていると知らしめるだけでいいじゃないかと思うんだけど。



 爺さんは渋っていたが、やらねば分からぬこともある。

 だから数種類の職で技能検定を行ってみる事になった。


 合格すれば貴族や王家の覚えも良くなると、職人たちは栄枯盛衰をかけて張り切って参加している。

 さて、その結果は?

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