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ギルド②

 ギルドを作るのに必要な物は、国全体の意識改革である。

 職人の世襲を否定し、能力による継承を是とする考えを浸透させないといけない。


 ただ、今考えを政治に向けると王侯貴族の否定につながるのでそこでどうバランスを取るのか考えないといけない。


「それではやる意味があるのか? 結局ギルドは王家存続を否定するだろう」

「技能の断絶が勿体無いんですよ。あの船大工にちゃんとした後継ぎもいなかったって知っていれば……」


 爺さんが俺の話に懐疑的な、やる価値があるのか分からないといった考えをみせるが、こちらの考えは変わらない。技能継承はしっかりやってほしいと思っているからだ。





 俺がギルドを作ろうといまさら言いだしたのには、きっかけがある。


 かつてグラメ村でキャラック船やガレオン船を造った船大工たち。彼らに冬の間に仕事を頼んでおこうと思い訪ねてみたのだが、まとめ役だったおっさんが死んでいたのだ。

 熱気球やなんやら、他にもいろいろと造れたはずの彼らだが、まとめ役が居なくなった途端にそれが出来なくなった。


 これは全体を把握し管理できるのがあのおっさんだけだったからである。

 後継ぎがいなくなったため、部分部分の専門家はいても指揮できる人間が居ないのだ。そのままやろうとしてもどこか足りない仕事ができてしまい、それが何なのかも分からない状態になっている。

 大きな仕事に時々見られる現象だ。


 不幸中の幸いとして、グラメ村にはおっさんの直弟子がいる。一通り教わっているので、彼がおっさんの技能を継承していた。

 だから仕事を頼む前に彼らをグラメ村に呼んで、もう一度全体を把握できる人間を育てる必要があるが、彼らも何とか船大工として復帰できるだろう。



 技能の断絶、それもこれも技能継承を家単位で任せていたことが原因である。

 どこかが技能を管理し、維持していく仕組みを作りたい。

 その方が技能の進歩を促せるだろう。


 民主主義の打倒はオマケという訳では無いが、きっかけはそんなものだ。





 と言っても。


「やはり無理ではないか? 長子継承は世の習い。これを安易に覆す反動を抑えきる事ができるかどうか。

 仮にできたとして、それを維持していくのはより困難ではないか?」

「そこまで難しいですか……」


 爺さんすら、この件に関しては匙を投げている。

 それほどギルドと王家存続の両立は難しい問題らしい。ギルドができて数世代で王家が滅ぶだろうと結論付けられてしまった。滅ぶは言い過ぎにしても、力を失い形骸化するだろうというのが正しいかもしれないけど。



 求める事が多すぎて、要求通りの仕様でギルドを作るのは難しい。

 もうちょっと詰めて考えないと爺さんの説得はできないようである。

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