焼き畑
一ヶ月間、森を切り拓いた。
結構な面積が切株だらけになったけど、まだまだ森は広がっている。今のペースなら10年20年かけても森全体から見れば微々たる量だろう。
とても、都合が良い。
男50人の半分を伐採に回したわけだが、切り倒した木々は現在乾燥中。
魔法で急速乾燥させてもいいんだけど、その場合は高い確率でどこかが割れる。急激な乾燥は負荷が高いのだ。
だから自然乾燥を少し加速させる程度で我慢している。2ヶ月か3ヶ月は放置して、それから板材にする予定だ。
「大将、今日の分が終わりやしたー」
「おーう、ごくろーさーん」
適当に作り始めた村だが、現在、家が30軒ある。
作りが適当すぎる家で煮炊きは出来ないので、家とは別に食事処を1軒だけ作った。俺を入れて61人しかいない村だからこんなものである。
他にある建物は、俺専用の屋敷。
王都から持ってきた物資を保管する倉庫。
真水の出るマジカル井戸。
塩製作小屋。
食糧貯蔵用の氷室。
酒造用に作った醸造所(予定)。
村を覆う石と土、二つの壁。
後は海に作った魚を獲る仕掛けがたくさん。
農地を作っていないのは、いい耕作地候補が無いから。
畜産にも手を出したいけど、それは農地を作ってからでいいだろう。
漁業を安定させるためにも、港と船が欲しい。そうなると船乗りの育成を……って、さすがにそれは気が早い。
そう言えば、近くに綿花が採れる場所があった。紡績や機織りに手を出すのもいいかもしれない。
あとは風車とか作りたいんだけど。近くに川が無いので水車は没。メシマズ村まで行けば川はあるけど。川に何かすれば戦争だから、手を出すのは拙い。
現状を把握したところで、農地を作ろうと思う。
どこを耕すのか?
それは勿論、切り拓いた森だ。
焼き畑農業ですよ。木を切って切株しか残っていないけど。
魔法で一気に焼き払ってしまえば、栄養豊かな土地の出来上がり。全く持って、簡単な作業だ。
問題は、栄養と一緒に石ころとかもゴロゴロある事かな。あと、でこぼこしている事と、水場が近くに無い事。
当たり前だが、俺は焼いただけだし。
石ころを取り除き、土を掘り返し、種を蒔くのはみんなの仕事だ。頑張れ。
「大将! 俺ら、農作業なんてやったこと無いんすけど!?」
「安心しろ! 最初はみんな初心者だ!!」
「そんなー!」
俺の魔法、細かい事は苦手だから。
さて、農業の代わりに柵でも作りますかね。




