王都の新年祭(犬)
当たり前だが、新年会が終われば速攻で帰るつもりだった。
しかし、そんな俺の目論見はあっけなく崩れ去る。
「アソンニー公爵閣下より、書状をお持ちしました」
「……ご苦労」
「では、失礼します」
早く帰らなければこうなるだろうという予測をしていたが。まさか新年会の当日に仕事を依頼されるとは思ってもみなかったよ!
仕事の話をされるなら新年会の間だと思っていたよ!
新年会の会場のすぐ外に人を配置するとか、どんだけだよ!?
これだから、貴族は嫌なんだ。
俺が元平民だからと道具のように扱おうとする。
仕事の内容は戦争のお手伝い。
報酬は金貨で300枚。
勝ち方に指定があるが、俺なら軽く出来るというその内容に頭が痛くなった。
報酬も破格で、「こんな仕事にこれっぽっちの報酬なのか」と難癖をつける事も出来ない。前に陛下から開拓用の資金として金貨100枚を受け取った身としては、金貨300枚にケチをつけた場合、陛下が金を出し渋ったととられなかねない。
それに報酬以外に断る理由が無いのが辛い。戦争を吹っ掛けた理由が「王国内の食糧が足りないから」で、奴隷と食料の略奪目的なんだよ。
名目が「王国の為」で「俺なら3日でできる事」なのだ。断るにはちゃんとした理由が必要になる。
だったらあの場で話をしろと言いたいが、あの腹黒ジジイの事だ。「俺が必要以上に注目を集め無いように、俺に配慮した形で依頼を出したのだよ」とか言い出すんだ。
ちくしょう、あの場だったら他の貴族に仕事を擦り付ける事も出来たのに。
本当に、嫌なところを突いてくれる。
「戦争は嫌なんだけどなー」
俺にできる事と言えば、愚痴をこぼすぐらいである。
こうして俺は戦争の援軍として南の方まで飛ぶことになった。
嫌な気分を振り払うべく、俺は仕事をさっさと終わらせることにした。
指定された他国の街まで行って、二酸化炭素魔法で街一つを無力化し、兵士に引き継ぐだけの簡単なお仕事です。
略奪された他国の物資が奪われるけど、知りません。
大勢の異国人が奴隷になるけど、そんなもんです。
残された住人が飢えと寒さで死にますが、いつものことです。
俺に責任があるというか、俺が不幸の元凶だけど、だからどうした。
俺が悪い。
俺が悪党。
当たり前すぎる結論に反論する気も無い。
ただ、そうしないと自国民が死ぬ。
だったら俺にやらないという選択肢は無く、外道仕事だってやってのけるさ。
すでに結論は出ているのだ。
ただ。
やっぱりこの手の“お仕事”のあとは気分が悪くなる。
だから王都に行くのは嫌なんだよ。




