王都の新年祭(貴族の挨拶)
「そちらも上手く勝てたようですな」
「いえ、それも公爵閣下のお力添えがあればこそです。閣下の育て上げた屈強な兵士があってこそ、略奪が上手くいったのです」
「いやいや。君の指揮官としての才覚が無ければ優秀な兵士も烏合の衆と化すだろう。だから、あの戦勝は君の実力なのだよ」
「「ハッハッハ」」
豚と豚がでかい腹を揺らしながら笑い合っている。
醜悪な事、この上ない。
しかしあれがこの国の上位貴族の双頭、2大貴族なんだよな。
頭が痛い。
新年祭。
それはこれから迎える新しい年に祝福を求め、王の下へと貴族が集まる大切な祭り。
煌びやかに着飾った貴族が集まり、互いの協力を取り付ける政治の場。
俺の苦手な腹の探り合いをする、似非紳士の社交場だ。
王様は挨拶が終わると早々に帰っていった。上司がいると部下が寛げないのは世の常識である。王は気を利かせてくれるのだ。
封建制の王国は貴族が大きな力を持つが、この国は専制君主制。王の意思こそ絶対の、王権神授説が本物の王国なのだ。2大貴族と言いはしたが、あの二人はそこまで怖くない。王の方がいろいろと強い。
とはいえ、睨まれると面倒な相手であるのは間違いない。重くなる気分を顔に出さないよう注意しながら、俺は二人の所へ挨拶に行った。
「お久しぶりです、閣下」
「おお、セガール君ではないか。久しぶりだな」
俺はまず公爵の方に頭を下げる。
一応、公爵とは顔見知りだ。にこやかに応じてもらえた。
「ほほう。彼が噂の男爵か」
「はじめまして、侯爵様」
次に侯爵の方にも頭を下げる。
侯爵は俺を値踏みするような目でじろじろ見ている。タヌキ爺に視姦されて喜ぶ趣味は無いっていうのに。気持ち悪いな。
「そう言えば、北で開拓村を率いているのだったね。調子はどうかね? 何かあったら私を頼ってくれていいのだよ?」
「ご厚意、痛み入ります。しかし非才の身とはいえ私も貴族の一員。開拓村如きに閣下の手を煩わせるなどあってはなりません。今はまだ己の手で進む所存です」
「若さは無限の可能性を秘めておる。何事も挑戦だな。だが、もしも何かあったら私に言うがいい。必ず力になろう」
「はっ!」
公爵閣下は孫ほども年齢の離れた俺を相手にするのが楽しいらしく、かなり俺の事を気にかけている、ように見える。
実際は俺を手札にしたい思惑が透けているが、上手くやるために搦め手でこちらが気分を害さないギリギリの手段をとってくる。強く当たってこないし、頭ごなしに何か命令する事も無い。あくまで善意の協力者と言う立場を崩さない。
ただ、ねぇ?
近くで蚊帳の外な侯爵が俺の事を睨んでいるんですけど?
自分は若く有望な貴族に粉をかけているだけ。ごくごく当たり前の行動をしている風を装い、他人の嫉妬を煽り、勝手に試練を用意するとか。
この公爵は本当に面倒くさい。




