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王都の新年祭(移動前)

 雪が降ると大変な事の一つ。

 風車が止まった時の事。



「大将ー! トイレの水が流れてねーっす!」


 風車の利用方法で大きいのは洗濯とトイレだ。

 製粉や脱穀にも使っていたが、あれは期間限定。しばらくは使いまくったけど秋限定のお仕事だったのだ。今はその二つしか使っていなかった。


 外に出て確認してみれば、風車が空回りしていた。海水を汲もうにも表面が凍ってしまったので水汲み桶が氷の上を滑るだけ。そりゃあトイレの水が来ない訳である。


 風車そのものは無事だったので、氷をぶち破ってしばらくは水が流れるようにしたけど。

 これには根本的な対策が無い。

 無茶なことを言うなら、堆肥が発酵するときの熱を利用することを考え付くけど。手間だしやりたくない。


「よし、お前ら。毎日3回、ここで氷を砕く仕事を与える。喜べ!」

「ひぃぃー! 大将のオーガ! デーモン! 貴族!」

「はっはっは。……氷を砕く道具は要らないようだな。素手で頑張るか?」

「ごめんなさい!!」


 原因が分かっているなら、取り除けないならそのように適応するしかない。

 引きこもりがちな村民に与える仕事を考えていたところだから、ちょうど良かった。

 何でもかんでも俺に頼りすぎるのは良くないのだ。


「大将が魔法を使う方が早いじゃないっすか!」

「コスパが悪い。却下」


 なにしろ、俺しかできない仕事は多岐にわたる。そして量が多い。俺以外が何とかできる部分は俺以外にやらせないと他のもっと重要な仕事が滞ってしまう。

 俺「しか」できないなら俺がやるけど、俺がやった方が「早い」程度なら他の奴にやらせる。得られる利益に対して俺というリソースを費やすかどうかを考えれば、それが当たり前なのだ。


 何せ、俺は貴族だからのぅ。



 それに、人任せにする理由はもう一つある。


「俺、もうすぐ王都に顔を出さなきゃならんのだよ。俺に任せて、俺がいない間はどうする気だ?」

「いや、その時は自分らでするっすけど……」

「「その時は」じゃない。「今」やれ。これは命令だ」

「はい……」


 貴族は、年に一回王都に顔を出すことが義務付けられている。具体的には正月に王都へ行かなきゃいけないのである。


 新年祭と言うのだが、貴族家の当主と次期当主は王都でパーティに参加しないといけない。

 やる事は顔つなぎと情報交換、あとは交易の約束である。

 情報網が日本とは比べ物にならないほど遅れている異世界だから、たまには直接顔を合わせて互いに出せる品を交易するために集まるのだ。

 貴族の当主がそんな事をするのは変かもしれないが、国の規模がそこまで大きくないのでこんなものなのかなと思う。


 あと、強制しないと出てこない貴族もいるから。例えば俺の様に。

 こんな時に遠方の領主は大変である。



 がっくりと項垂れた農民に蹴りを入れつつ、俺は不在時の仕事の割り振りを見直す。

 飯と寝るところの準備だけちゃんとやっておけば、村の方はなんとでもなるだろう。俺に頼っている部分は大きいけど、全員子供じゃないのだし。そうそう変な事もしないだろう。


 けど、王都の俺が何かやらかすかもしれない。

 貴族的な振る舞いって、苦手なんだよねー。

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