馬車の座席
馬車を改良しようと思う。
グラメ村の中は馬車ならぬトナカイ車が運行している。
用途は主に仕事に行く連中の運搬である。通勤トナカイ車と言う訳だ。
村の連中には好評だ。農業をやっている奴の中にはそのままだと2㎞以上歩かなきゃいけない奴もいるので、これが有るだけで朝一の疲労軽減と大幅な移動時間短縮になる。
目的が目的だけに、朝はトナカイ総出で対応させているほどである。
俺はそれを、馬が来たことでトナカイ車から馬車に変更しようと思っている。
グラメ村の道路は非常に気を使っている。
道路は全て魔法による石畳なのだが、デコボコを最小限にすることで振動を減らし、乗客の負担軽減に努めている。さらに気を使っているのがシュクレ村行きの直線道路だが、あれは気合を入れ過ぎた。まぁ、丁寧に作った分だけ補修なども楽だけど。
そんな段差の少ない道路だが、それでもトナカイ車はかなり揺れる。
揺れの理由だが主に車輪の精度の問題と、車軸のしなりが原因だ。
車輪の精度は木製だけにどうしても歪みが生じる。木製部品は水分を抜いてから加工し、最後にニスなどを塗って仕上げているのだが、どうしても湿気による歪が生まれる。しかも常時歪んでいる訳では無いので、特定部位に負荷がかかったりかからなかったりする事になり、最終的にはいつも歪な形になってしまうのだ。
車軸だって車軸受けとの間に遊び・ゆとりが必要なのでしなりが生じるのはしょうがない。例え金属に変えても車軸はしなるだろうし、しなりが無くなると車軸に負荷がかかりすぎ、破損の原因になる。
だから揺れが生じるのはしょうがないとして、揺れが気にならないようにするのが王道である。
つまりサスペンションだ。
と言うのは大ウソで、作るのはただのクッション、柔らかな座席である。
サスペンションの構造はわりと簡単だ。車軸受けの上にばねを置き、その上に荷台を乗せればいい。
バネと言っても金属をグルグル巻いたようなバネではなく、木の板のしなりを利用した物でも構わない。何でもいいが、衝撃を吸収するものを組み込むだけでいい。
ただ、それよりも座席をもっと良くするだけでいいと思うのだ。サスはメンテナンス性があまり良くないので。
座席なら配置も簡単でメンテナンス性に優れている。後付けが楽だ。
なので、座席に木バネのサスを仕込んで木の板を敷き、座るところに羽毛をたっぷり使った座布団を置いてみた。
人体実験一号は、車酔いしやすい男である。
「む? 普段より揺れが弱いっすかねー?」
俺もついでに座ってみるが、車の座席に比べればフワフワし過ぎて安定感が無い。微妙である。
だがしかし。
「これなら、大丈夫っすね。酔わないっす!」
村の奴らにはこの程度でもいいらしい。
そもそもそのままの乗り心地が悪すぎるので、サス椅子と座布団だけで大幅な改善になったようだ。
村の連中に好評な新しい馬車だが、俺としてはまだ不満の残る出来である。
最新のクッション技術に追い付けるとは思っていないが、もう少し頑張ってみたいな。




