冬の大敵
木々が枯れ始めた事で感じ出した冬だが、とうとう冬を象徴する敵が現れた。
雪である。
「寒い! 大将、助けてくれ!!」
「毛皮を着ろ、毛皮を!!」
「領主様! 風呂は天国ですが、入った後の帰り道が地獄です!!」
「どうしろと!?」
「男爵様! 道が雪で埋まって移動できません! 足が痛いです!」
「それは霜焼けだ! ちゃんと長靴を履け! いやその前に風呂で足を温めて来い!!」
「大将!」
「領主様!」
「男爵様!」
「「「助けてください!」」」
「ああもう!! まとめて面倒を見てやらぁっ!」
冬の雪は強敵だ。
とにかく、一回の攻撃で出る被害が大きい。
範囲が広いのは言わずもがな。降っている時も降った後も村にダメージが入るため、その回復に大わらわである。
交通機関が歩きしかない我がグラメ村でも、道が雪に覆われただけで大ダメージだ。
別に雪そのものは珍しくもなんともないが、グラメ村は王国でも北の方に位置し、ある意味では周辺人類最北端のような場所である。その分、降雪量が多いのだ。
あまりの降雪量に俺も村民も驚くばかりである。
無論、俺が何もしていないわけではない。
今まで大量に狩った獣から毛皮を剥ぎ、鞣して全員に支給してある。毛皮は家の中用の敷物と毛布代わりの掛布団、衣類の上に羽織るジャケット、膝までを守る長靴となっている。
完全に蛮族スタイルと言える外見になるが、そんなものは気にしていられない。寒さを防げるなら何でもいいのだ。
家にも煙突と暖炉を増設し、自由に使えるわけではないが、暖炉用の薪木を支給している。
煙突は真っ直ぐにして雨や雪が侵入すると意味が無いので、途中で四回曲げて直接煙が出ないようにしてみた。イメージとしては排水管のトラップである。
あとは窓に二重ガラス板をはめて外気温が家の中に入りにくい構造にする。
とはいえ、俺が用意した家はそのほとんどが≪石壁≫の魔法で作った単一素材で熱伝導の良さげな住宅である。ぶっちゃけ、気休めにしかならない。今から家を作り直すと村全体を作り替えないといけないので、そこまで頑張りたくない。
断熱用の内壁に木材を使おうと思うが、木工には時間がかかるので、全員が快適な家に住めるようになるまで時間がかかりすぎる。
道の問題もあるし、家の改築には優先順位やそれまでのフォローも考えなくてはいけない。
そもそも家の中で調理できない環境では毎日外出の必要があるわけで。毎日ではないが風呂の事もあるし、誰もが手間暇かけて効率が悪い。
という訳で、作りました。
村民約200人が暮らせるサイズの、巨大集合住宅を。
これは基本三階建て、そんなアパート的な建物を円を描くように並べた巨大ドームである。もちろんドームだから蓋はしたし、その天蓋以外は二重壁による断熱構造を完備して、風呂と食堂も作った。トイレだってある。
だから家から出なくても生活できる。
アパートと言うより寮に近いけど、あまり細かい事は気にしない。
元の家だって似たようなものだし、今更である。
その後、換気の問題が発生して酸欠になりかけたが、空気を循環させる構造を追加して何とかした。
あとは火の管理を徹底し、俺の管理下に置いた。酸欠にならないように、馬鹿をやったら追い出すと脅しつつ、きっちり管理して見せた。
……なんか俺だけ手間と仕事が増えた。
俺の奉仕の分だけ、こいつらもこき使ってやろうと決めた。
これは俺の器が小さいとかではなく、単純に与えられることに慣れさせない為の措置である。
大事な事なのでもう一回言っておこう。
俺の器が小さいわけでは、ない。




