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グラメ村の蹄鉄事情

 戦後の処理は俺の仕事じゃない。

 どれだけの収入が友好国にあろうと、俺たちの懐に入る額は一定だ。たとえ多かろうと少なくとも構わないのだ。

 その辺は戦果を見定めて報酬を決めようとするとかなり面倒なことになるのでしょうがない。下手すると同盟崩壊の危機だ。


 そんなわけで俺はそのままお暇するのだが、たぶん予想以上に高収入だったんだろうね。武官たちの表情はかなり明るく、俺に対し丁寧に接してくれる。

 推測になるが、あの砂上船(けっかんひん)に自信があったんだろうね。俺を相手にすると逆効果だけど。

 屋外で二酸化炭素濃度を変える魔法を使うと風がその効果を払ってくれるんだけど、それが無い、船の中にいた連中は全滅していたんだよな。味方が船に突入する時にはこっちで元に戻しておいたけど、放置したら味方殺しになりかねん。なかなか危うかったよ。



 王都に戻ったら義兄に会って報酬の手配を頼み、俺は村に帰還する。

 王都に残ってもやりたいことがあるわけじゃないからな。大事なのは村でのあれこれである。





 村には馬がやって来たのだが、そこはあまり手がかかっていない。

 これは爺さんの手配した馬飼いがちゃんと仕事をしているからで、俺たちの出番はあまりない。


 馬具の中でも蹄鉄はかなり重要なんだけど、蹄鉄、この世界にはもうあったんだよ。

 俺は騎馬扱いであるトナカイに装備させるための物を用意したんだけど、家畜には蹄鉄を付けるのが常識だったらしい。小さな村はともかく、大きな街では全ての家畜に蹄鉄を付ける事は珍しくない。豚とか羊とか、山羊とかにも。


 俺、その辺は専門家と話をしてこなかったから全く考えていなかったよ。

 この村に流れてきた奴の中にも知っている奴がいなかったよ。

 今回、専門家を招致して初めて知った事実である。



 今まではともかくこれからを考えて、今、分かって良かったと見るべきだろう。ここから巻き返せばいいんだし。今まで大きな被害も出ていないし。

 全部の家畜に揃えるのは大変だけどな!





 蹄鉄の材料は名とは裏腹に鉄とは限らない。むしろグラメ村以外で鉄を使う事など無い。


 王国だと普段は革の蹄鉄を使う。中には紐を巻いただけの物もある。作りは簡素だ。

 一部では青銅製の蹄鉄を使うが、これは王侯貴族が乗る馬の物だな。金属製の蹄鉄はレアなのだ。

 江戸時代の日本の場合は草鞋とか使ってたんだ。大陸では金属の蹄鉄が主流になった頃に草鞋とは、なかなか信じがたい話である。出島で外国人の出入りを管理していたとはいえ、そこも情報統制でもされていたのかね? 俺にはやる意味が分からない、意味の無い事をする。



 野生の馬には必要ないんだけど、餌の種類が少ない事や動き回る環境の狭さ、あとは馬房で自分の小便が蹄に付くことを避けるために蹄鉄は必要になる。

 特に小便。アンモニアが蹄を悪くするらしい。人間もアンモニアが付くのはNGだし、そういう事なんだろう。


 日本だって古代はともかく奈良時代には普通に馬がいたというし、なんで日本では蹄鉄が発明されなかったんだろうな?

 そこは必要性やら整備の手間とかそういったのが関係してくるんだろうけど。本当、不思議な話である。



 俺はそんな事を考えて現実逃避をしながら、蹄鉄の原型を作り続けていた。


 俺の後工程で形を整える担当とか、実際に家畜に蹄鉄を付ける役の奴とか、みんな目が死んでいる。

 降って湧いた急ぎの仕事に、心が折れそうになっている。


 大丈夫だ。

 夜間照明が発達していないこの世界、深夜残業は無いんだからな!

 ただし! 今は春なので明るい時間は冬よりも長くなっているけどな!

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