開校に備えて
冬の間、とある仕事で考える事が増えた。
それは学校のカリキュラムに関する相談だ。
爺さんからの依頼で、学校として教える授業内容を一つと言わず、二つ三つほど考えておくように言われたのだ。
読み書き算数に関しては誰でも思いつくものなので除外と言われている。
俺が教えられて、他の誰かが教え無さそうな事で、なおかつ何かの役に立つこと。それを冬のうちにまとめておこうと思う訳だ。
候補は一応、ある。
一つ目。主に絵の描き方を教える美術の授業だ。
遠近法、人体デッサン、マンガの様なデフォルメなど、基礎中の基礎レベルの話であれば何とか教えられる、と思う。最大でも中学の授業レベルだが、1年で卒業するような学校なら特に問題にはならないだろう。
絵の描き方を覚えれば、各地へ視察に行ったときなどに絵で情報を持ち帰れるようになる。人の顔を上手く書く事ができれば人相書きなどがより正確になる。現代では写真で代用できる実用性と言う意味では廃れた技術だが、ここではまだ現役なのだ。
二つ目。軍隊式の歩き方。
正しくは集団行動の授業でやるような「全員が同じ歩幅で、同じリズムで歩く」だけの内容なんだけどね。軍隊なら無意識レベルで出来て当たり前の内容だろうし。これも候補に挙げておく。
三つ目。ロープワーク。
ボーイスカウト時代に学んだ技術だが、実用性の高い技術だ。
問題は1年間も教え続ける内容じゃない事だな。正直、1月もあれば全部教えられると思うよ。
四つ目。パルクール。
地形を利用した移動術と、ルート選択のスキル。
道なき道に、行く道を見出す。
歩く、走る、跳ぶ、這う、登る、バランスをとる、投げる、持ち上げる、自衛する、泳ぐといった十種類の行動から最適解を選択する。
専門的な事は無理でも、さわりとなる基礎概念ぐらいは教えられる。
最終的にはYUUSYAを攻略できる選手になって欲しいものだ。……未だにクリアした奴がいないんだよ、畜生。
学術系の話は上手く教える自信が無いのと、俺が付きっ切りで授業するわけじゃないので代理となる教師を用意できないのとで、候補から外した。体育系はどうしようか思案中。誰も基礎運動を教えないならやらせてもいいと思うんだけど。
ネタを言うなら武術の授業と称してトナカイとサシで勝負する授業をさせてもいいんだけど。これは生徒の年齢次第かな? チームで挑ませても若年層なら無駄死にになるし。
ああ、教える時のリスク管理はどこまでやるべきかな?
貴族の子弟が相手なら、過保護になる一歩手前ギリギリを狙いたいんだけど。
授業とは関係ないかもしれないけど、そこは爺さんと相談しておくべき事かな?




