王都の新年祭(麺長)
新年祭の飯は美味い。
美味いものに自信のある貴族が自慢の料理を持ち寄るので、それも当然の事だ。ついでに美食家や毒見役による検閲もあるので味だけでなく安全面の保障もされている。
中には趣味嗜好によっては受け付けない物も存在するが、そういった物はなんとなく臭いや見た目で分かるのでハズレを引く事など滅多にない。
つまり、ごく稀にならハズレを引く事もあるんだよな。
甘い匂いのする焼き菓子だったのだが、中身が川魚で、匂いの正体が蜂蜜だった時の衝撃は忘れたい。
川魚は泥を吐かせたものを使っていたし、小麦粉に蜂蜜を練り込むのはよくある手法なんだけど……組み合わせて美味しいかと聞かれると俺は首を横に振る。味を知りたければ川魚の素揚げと蜂蜜ドーナッツを一緒に食べれば似たようなものになると思う。食感はずいぶん違うだろうけど。
見た目は大きめの焼き菓子なので見事に騙された形になるが、特に何か説明を聞く事もなく手を出した自分が悪いんだろうね。
しかし俺はその料理を美味しいとは思えなかったが、他の貴族は美味そうに食べていた。
敬遠する貴族もいたので俺が特殊という訳では無く、一部の人間が愛好するものなのだろう。
さて。
そんなハズレを無視して、いつものようにパスタを供するマンソン卿のエリアでいくつもの料理を食べ比べしてみる。
去年に続き今年も寒天デザートを用意しているから、ここだけで腹を満たしてもいいんじゃなかろうか。俺以外にも似たようなことを考えているであろう多くの人間がここに集中している事から、マンソン卿の料理の素晴らしさがよく分かるよ。
パスタはソースをかけた物とスープに入れた物の二通りが主軸で、それぞれ材料で味を大きく変えている。
こちらもアドバイスと言う事で麺の太さや形について考慮するように言っておいた。ソースの絡まり方が変わってくるからね。同じソースでも麺の形状だけで全く違う評価になるんだよ。
滋賀の○リバリジョニーで中太麺のラーメンに細麺の替え玉を入れてもらったら随分残念な事になったのを思い出すな。替え玉無料とはいえ、麺の太さなどの指定ができないのは駄目じゃないかと思う。
また、麺料理で特に注意すべきは麺の長さである。
日本人はラーメンを食べる時、麺をすすって食べるけど、外国人は麺をすする習慣が無いので、日本のラーメンは麺が長すぎ、食べにくいという評価を受けている。
逆に海外のラーメンは日本人にはすすりにくい、短い麺を使っている事が多いので物足りなさを感じるという。
海外には味が酷いラーメンが多いので現地向けの味が注目されがちだけど、麺の方も駄目なんだよ、と、料理研究家が言っていた。本当かどうかは知らんよ。
では、ここで食べられているパスタの長さはどれぐらいか?
細い麺はおおよそ20~30㎝ぐらいだ。
「うどん1尺そば8寸」という言葉が頭にあったので、それを採用した結果である。8寸だと24㎝ぐらいなんだけどね?
フォークで絡めとって食べるのが主流だから、すすらないので長さとか関係ないと言われそうだが、麺伸ばし棒を規格統一して一定の品質を保つようにしている。こういった努力が大事だと思うんだよ。
太い麺だと10~15㎝となる。
フォークにグルグル巻いた時に出来る麺の塊を比較して、細い麺と同じぐらいの見た目になるように調整したらこうなった。
フォークに巻くのが大変と言う事で、そのうちマカロニとか作らせてみようかと考えている。
マカロニと言えば俺はグラタンと連想するんだけど、この国は牛乳嫌いが多いので、もうちょっと何かアピールできる物が欲しい所なんだよな。




