中間結果報告
色々と熱気球の研究をしているうちに、夏が来た。
ここまでの実験は基本的には失敗続きで、有人飛行をする為の準備が整ったとは言い難い状況である。大きさ2mクラスの小型模型を飛ばし、検証を重ねる日々である。
ある程度以上に完成度が高まると、小さな模型でもそれなりの浮力が得られる。
一度は係留していた綱を引きちぎり、大空へと舞っていく事件も起きた。燃焼物が残っているうちに落ちてくる事は無かったが、もしも気球部分に火が付いて墜落しようものなら火事になってしまう所だった。
……おかげで親方が気球爆弾を思いつきやがったよ。
熱気球の研究をやっていてはっきりとわかる成果で一番は、アイナが空を怖がらなくなった事である。
ふわふわと浮く熱気球はアイナの気を惹いたらしく、火を灯し浮き出す瞬間には「おー!」と叫ぶようになった。そして手足をばたつかせ、空まで熱気球を追いかけてと俺にせがむのだ。
アイナにとって、もう空は怖くないらしい。
ネタで一度宇宙からの地球降下でもやってみたいね、アイナを連れて。「アプ○ラスによるジャブロー強襲!」とか叫びながら。
気球爆弾は一応の成果として爺さんに情報提供しておいた。
爺さんの方でも同じものを試作し、その有用性を確認すると、疑問点と改善案、ついでに研究開発資金と物資が届いた。
疑問点は浮くのはいいけど、降りる方をどうやって任意で行うかについて。
改善案は「もう大きい方を作り、それで検証を重ねるべきだ。小さなものでは見えてこない問題点を今のうちにはっきりさせよう」というありがたいお言葉である。あと、「火の粉だが、物が大きくなれば気球まで届かないのでは?」という推測も添えてあった。
それらを確認するのに必要な金銭と物資が爺さんによって手配された。
空は未知の世界なので、爺さんもなかなか甘い。
空は一定以上の高度になると常に強い風が吹き荒れる世界になり、熱気球はその風を捕まえて遠くを目指すのだ。高さによって風の向きが違うので、どの高さにどこへ向かう風が吹いているのか調べないといけないけどな。きっと新大陸へ向かう風も吹いているだろう。
たどり着くまで物を燃やし続けるのは現実的じゃないけどね。俺以外にもう一人の人員を配置し、俺が起きていれば魔法で、寝ている時はもう一人が燃料をくべて、そうやって気球を飛ばすことは可能だと思うのだ。
付き合ってくれそうな人間など、いない訳だが。その間の食事とかどうするんだっていう問題があるわけだが。新大陸に向かう風が本当にあるのか、どうやってそれを確かめるのかも分からないが。
うん。
机上の空論だったな。
妄想は捨て置いて、大きな熱気球を作ろう。




