夏の腐敗ブツ
人生ままならないと思っていたが、面倒事は割と身近に存在するのに気が付けないのがいただけない。
「死ねぇっ!」
俺は村の中で村民に襲われた。
何を考えて行動に移したかは知らないが、この村人Aは不意を打とうとしたにも拘らず、わざわざ声を上げて自分の行動を教えるという愚行をやらかした。
訓練用に作った鉄の槍を俺に向けて突き立てようとして――防御魔法に阻まれて攻撃に失敗する。
「死刑は当然として、理由を聞くぐらいはした方がいいかな?」
まぁ、俺にしてみれば何の脅威でもないから焦りも恐怖もないけど。
それなりに村のみんなからは慕われていたと思っていただけに、この結果はわりとショックだ。
殺人に関するルールは至ってシンプルだ。
死刑一択。
貴族である俺が意味もなく平民である村民の誰かを殺した場合は腕の切り落とし程度で終わるけど、同格や格上の相手を殺そうとすれば死刑以外の選択肢が無い。
全く行われていない訳では無いけど、親族に類が及ぶ連座制はまともに制定されていないので本人に全ての責任が行くのが普通である。
これは実行されたかとか未遂であったとかに関わらず変わらない、王国のルールだ。
もっとも、この村限定だが司法の長である俺は自身の都合でいくらでもルールを捻じ曲げられるんだけどな。
外部に話が漏れなければいくらでもやりようがあるのだ。
取り調べの結果、今回の愚行はただの逆恨みである事が分かった。
将来的に村の運営を行う準貴族的な名主を任命したわけだが、自分が選ばれていない事に納得がいかなかったらしい。本来自分たちより立場が下の女が運営に加わっているのもそう考えた理由の一つであるようだ。
こんな馬鹿な事をするほど短絡的な人間を任命するはずが無いのだが、彼の中では自分ほど優秀な人間を選ばない俺がすべて悪いらしい。
年単位で計画を練り、空き時間で技を磨き、ついに愚行に至ったわけだ。
友人もそれなりにいたようだが、殺人未遂をしたのであれば庇えないと匙を投げた。むしろ自分はこんな奴の友人じゃないからと突き放す勢いで。
この馬鹿についてはもちろん公開処刑にしましたとも。
処刑は見せしめであるがそれよりも貴重な娯楽と言う事で、強制はしなかったけど100人以上の見物客が来た。
苦しませる趣味は無いというアピールで断頭台送りである。
実際は、断頭台で首を切り離してから数秒は生きているんだけどねー。




