雑菌は強い
味噌は樽で小分けにして何パターンも試しているけど、そのうちの半数近くが僅かに毒素を持ち始め、腐る直前であった。
俺はまず気密区画が正常に機能している事を確認する。
酸素100%エリアから始まり、窒素100%、二酸化炭素100%、真空、普通の空気の順で部屋が作られている。
人間だけじゃなく、植物だって途中で死ねる俺専用の建物の中に味噌はある。
少なくとも、不備は見られない。
味噌は持ち込むときに麦麹を混ぜているので、魔法による滅菌処理はしていない。
しかしだ。それ以前の大豆の時に滅菌を魔法と熱湯処理の二つの方法で行っている。これで殺せない菌がこの世に存在するとは思えないんだけど。
麦麹が変異して毒持ちの、普通の菌類になったとは考えにくい。
麹菌は年単位で変化が無かった物を持ち込んでいるので、ここでいきなり変異したというのはご都合主義の塊のような話だ。この可能性は考えなくてもいいだろう。
じゃあどうして腐り始めているんだよと言う話だが、腐りだしそうな味噌に共通点は無い。
物は離して置いていたし、どれか一つを起点に菌が移動するという可能性も無い。
繁殖してしまった雑菌を増殖させてその性質を調べるしかないか。
調べた結果。
原因は麦麹を作る前の麦にあった。
麦を麦麹に使う前に雑菌を殺していたわけだが、それだけでは駄目だったらしい。雑菌を殺し切れていなかったのだ。
殺しきれない理由は、仮死状態の菌がいたから。
死んでいると判定された菌は殺菌対象にならず、魔法の影響を無視して麦に付着したまま麦麹に混じる。
あとは水分などを補給して生き返り、繁殖していたのだ。俺は生命反応をチェックしていただけだからそれが分からなかったのだ。
って、分かるか!
今回気が付けただけで運が良かったよ!!
雑菌は殺し切れない現実を反省し、水の不純物を取り除く≪純水化≫の応用で≪除菌≫魔法を開発し、味噌関係はようやく軌道に乗る事になる。
仕込みが夏前になってしまったが、秋の終わりには白味噌レベルの物ができるだろう。
菌類の生命力は異常である。
教訓として覚えておこう。




