流通網
一口に流通改善をするといっても、俺に出来る事などたかが知れている。
と言うより、ほぼ無い。
素人が何か言える事など無いのが普通だ。
まず、蒸気機関車の作成はできない。
この世界にはモンスターなどの脅威が無いけど、鉄道を敷くなどまず無理だ。生産力が低すぎる。冶金技術が未熟すぎる。
生産性の低さに目を瞑ろうと、必要な技術、つまり土台が無いのだ。
と言うより、いきなりレールを作る技術がある方がおかしい。
馬車関係もアウトだ。
俺が馬車の改造をしたところでサスを付けたりプラウのような馬具の改良が上限になる。鐙を付けても流通改革にはならないだろう。
無駄ではないが、流通をどうこうできるものではない。
では道路を改善すべきなのか。
だいたいそれで合っている。
どちらかと言えば、道の悪い所を解消したり新しく道を作ったりした方が喜ばれる。そして移動時間短縮に貢献できる。
獣道みたいなところを馬車で通るのは振動の問題で無理があるし、状況次第では大回りも余儀なくされる。山があったら遠回りさせられることも珍しくない。有ったら便利な道路が、全然足りていないのだ。
道を通し、石畳を敷く。それが出来れば完璧だ。
流通網は、まず道路から。
時代的にもそれが妥当だろう。
じゃあ、勝手に道路を作っていいのかと言うとそう言う訳でもない。
便利な道路は戦争にも利用される。わざと不便にしている場所も多い。川に橋をかけるのだって要求があるまでやっちゃいけない。
道路は重要だからこそ、国が主導して敷く事になる。
シュクレ村まで続く道は例外である。
あれは当時の話だけど、国外の作業だったし。あくまで国が主導するのは国内の話なのである。
問題は、俺がそういった作業にかかりきりになる事ができない事だろうか。
村近辺なら問題ないけど、その他の場所では無駄が大きい。
どこまで手を貸すか。
対価に何を要求するか。
自分の中でそこまで詰めてから爺さんと話を進めた方がいいだろう。
変な要求をされない為に、ある程度アイディアを形にしておこう。




