農薬(中)
害虫駆除を目的とした農薬の歴史はそんなに深くない。
日本で農薬が使われ出したのは江戸幕府の始めのころ、トリカブトを使った物が使われたと言われている。
ヨーロッパだと1700年ごろに除虫菊を使った農薬が使われ出したという。除虫菊は明治の日本にも輸入されるほど効果的である。実際に使っている俺が言うのだから間違いない。
近代になってようやく登場したのが効果的な害虫駆除の薬品、農薬なのだ。
ついでに、作物を枯らさず雑草だけを枯らす除草剤については20世紀半ばにようやく登場する。
だが、当時の除草剤は魚まで殺す物だった為、社会問題になっていたりする。
ただし効果の方は凄まじく、農家の負担を大きく軽減していたという。水撒きと草引きは、本当に大きな負担だからなー。それをほぼしなくていいなら負担は半減だ。倍の土地を管理できるようになるよ。
可能なら除虫菊の成分抽出を行い農薬を作成したいところだが、さすがにそんな物は作れない。有機農薬すら作れない。まぁ、パラチオンなどは人間に対しても有害なので使いたくも無いのだが。
魔法チートは万能ではない。出来ない物は出来ないのだ。
最近はシュクレ村の農作業も管理しないといけない訳だが、そちらの農薬の事をすっかり忘れていたのだ。
慌ててヨカワヤに頼んで除虫菊の採取をお願いした。グラメ村の周辺の除虫菊はかなり広範囲にわたって摘んでしまっているし、シュクレ村周辺に除虫菊は自生していなかった。
王国どころかこの世界には除虫菊を農薬にする発想がまだないので、他の誰かが除虫菊を採取する事は無い。
よって、除虫菊は安価で大量に入手することができる。
ヨカワヤに払うお金は少なくて済んだ。
「でも、次は無いと思いますよー」
しかし、こうやって人を使って集めれば、何の為に集めたのかと思われる。
除虫菊を何らかの方法で、何かに利用していると思われる。
利用方法はすぐにバレないだろうが、利用価値がある事だけはバレてしまう。
だからこの後、爺さんのところにこの情報をさっさと売り渡してしまう予定だ。絶対に隠しておきたい情報っていう訳でもないし。売れるときに売れる値段で売ってしまうのが正解だ。
ノーフォーク農法を始めたら農薬の需要も一気に高まるし、使わないと害虫の大量発生を招くからな。
農法を広めて飢饉を招くとかになりかねんよ。
今後は除虫菊を栽培してでも採取しないと駄目になる。
除虫菊の自生に頼るのは、もう無理という事だ。
俺一人で考える事でもないし、グラメ村の産業にする余裕はない。
どこかのだれか、適当に土地の余っていそうな貴族にでも頑張ってもらい、そこから買えるようにするのがいいかね。




