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温泉熱の利用

 源泉の熱さとシュクレ村の温泉水の温度差を考えると、20m下の熱伝導率は本当に悪いようだ。

 熱の拡散が行われないため、数㎞もの間で7割近い熱を保持している。


 あの時は急ぎの仕事なのでしっかり確認しなかったが、間に別の熱源があったのかもしれない。普通に考えればありえない話だし。

 もしくは水の熱伝導率が良いため、源泉側の熱がより効率よく伝わる事で熱の拡散量を上回っているとか? いや、温度はちゃんと下がっているんだから上回ってはいないか。

 温水の利用量と源泉の水量の関係も関わっているかもしれないな。


 とにかく、地下水路の距離と減少している熱量から利用可能な温熱効果を計算しない方がいい。

 こちらの想定を無視した変化があるだろう。徐々に、徐々にやっていくべき案件だ。





 まずは農地、温室の強化からだ。

 直接温水――というより熱湯か?――を作物に降りかけるわけではない。下手にそんな事をすれば作物を枯らして終わる。


 だから農地の地下10mぐらいに水路を作り、そこから地面を温める方針で行こう。

 大きすぎる変化は見込めないが、いきなり地上に温水の流れる水路を作るのはいろいろと、怖い。特に温室は急激な温度変化でどのような変化が起きるのか予測が付かないので慎重に行いたい。

 温度計は温室にしか用意していないが、もっとデータ収集をするために増やそうかな?


 今回の地下水路は実験目的なので最悪を想定し、農業施設間にいくつか水門を設置した。

 もしも悪影響が出たと思ったらすぐに取りやめられるようにするだけでなく、季節など環境面での必要不要の判断により地下水路の水量調整をしたりと、いろいろと役立つ事だろう。

 風呂の湯の温度管理も兼ねているが、ね。



 もう一つの利用は寝所の床下暖房だ。

 こちらは分かりやすい効果を求め、地下5mまで水路を引き上げた。

 地熱がどの程度になるか分からないけど、寝所だって床に直接寝るわけじゃないし。ちょっと暑くなるぐらいは問題ないと思うんだ。


 この時代でも木製のベッドぐらいはあるし、寒さを防ぐ目的で藁を敷いて寝る。毛皮のシーツや布団も用意している。

 それらと床下暖房が組み合わさった時の事を考えるとどうなるかな、とは思う。



 これらはまだ実験段階で、あとで色々調整することになるだろう。

 農地の水路を5mまで引き上げるかもしれないし、寝所の水路を10mまで下げるかもしれない。

 やってみないと分からない事だ。



 そして、これらを行った事で風呂の湯がどこまで冷めるのか。それこそもっと重要な案件である。

 風呂の湯として使えなくなるようでは本末転倒。せっかくの温泉が駄目になるようではだめなのだ。それを忘れてはいけない。





 余談であるが、風呂の湯は使用後にだが雪を融かすために使われる。


 風呂の近くにプールのような場所があり、そこに湯を流し込んでいる。そこに雪を放り込んで水にしてから外に捨てる。

 雪って除けただけでは邪魔だからね。水にしないと道を塞ぐし、そのうち捨てる場所が無くなる。北国特有の都市計画で除雪に配慮しているが、だからといってそれだけで何とかなるわけでもない。


 除雪だけでなく融雪まで計画を立てないと、雪国の村を維持するなんてできないのだ。

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