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出産

 小麦の脱穀を終える頃には収穫祭であり、普段はそちらに駆り出される。

 しかし、俺には全く違う仕事があった。


 夫としての、出産の手伝いである。





 冬ごろに仕込んだ子供たち(・・)が、その最初の一人であるユリアの子がとうとう産まれた。



 ぶっちゃけてしまえば、俺にとって気が重い話でしかない。

 愛の無い結婚というのが重しになっているからだ。


 前世の結婚は恋愛結婚ではなく見合い結婚だったが、それでもゆっくりと愛を育み、その結果として子を儲けた。

 それが政略結婚ともなると前世の経験というアドバンテージが一切無いため、自分でもどう受け止めていいのか分からないのだ。


 あの時(前世)は子が妻の腹の中で大きくなっていくのが楽しみだったんだがなぁ。今生では戸惑いしかない。



 だがそれは産まれてくる子供には何の関係も無い話で、親となるのだから覚悟を決め、親として振る舞わねばならない。

 愛のある良い父親に成れずとも、せめて威厳のある、尊敬できる父親を目指すのが筋だろう。





 実際に子供が生まれる瞬間に立ち会うのは前世から数えて4回目だが、あまりいいものではない。


 前世では男親にできる事なんて妻を励ます事だけだったからまだ良かった。今の俺みたいに回復魔法という何かできる手段があると、ついそれに頼りそうになってしまう。

 出産中の回復魔法は、実はご法度だ。

 理由はよく分からないが、出産の邪魔になってしまう。出産直後か、一時的に出産の邪魔になっても構わないような状況でしか出番が無い。


 出来ることがあろうと、何もせずに無事出産してくれることを祈るだけ。

 基本、無力でしかない。




 初産は半日にわたる大仕事である。

 女親であるユリアは、命がけの出産を苦痛に耐えながらやり遂げた。俺がいるから命だけ(・・)は保障されていたが、それでも未知の行為に耐えきった。今は消耗しつくし気絶している。


 付き合わされた俺の消耗もまた激しく、完全に気が抜けてしまった。

 これに慣れるとか、まず無理である。



 ただ、産まれてきた子供を見た俺は大きな決断を迫られる事になった。

 この世界における俺の初めての子供は、俺ほどではないが大きな魔力を持っていたからだ。


 魔法使いの資質は遺伝しないんだけど、王家の人間の資質か何かかね?

 かなり特殊な運命を背負った子になりそうだよ。


 報告しないと、拙いんだろうなぁ。

 隠し通すのは不可能だし、子供の意思もある。



 先の予想できない展開に、俺の許容量はパンクしそうであった。

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