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特需の終わり、その影響

 特需とは、一定期間のブーストだ。

 時間が経てばそのうち無くなる、祭りのようなものでしかない。


 木材特需は夏と共に終わりを告げた。



 周辺の村々で伐採が行われた結果、造船所の処理能力を大幅に上回る木材が供給され、山のように積まれた丸太が消費される来年春までの買取拒否が決定したのだ。本来であれば移動が難しくなる冬の前までは買取が行われるはずだったため、3ヶ月ほど予定を前倒しした計算になる。

 その来年以降でも買取査定は厳しく見積もられ、通常よりは割り増しだろうが、買い取り金額はこれまでの8割程度まで落ち込むと宣言された。


 それもそうだろう。

 需要に対し供給が追い付かないと思われたからこそ高額査定が行われたのであり、供給が過剰であれば減額は当たり前である。



 造船所というかその上の爺さんの本音の部分では、木材供給に人手を使いすぎた結果、冬の燃料備蓄がヤバくなってしまう事を懸念しての買取拒否らしいが。

 昔の木材特需の際に、売るための木材ばかり集めて、自分たちが使う分を全く用意していなかった馬鹿な村があったらしい。金を抱いて寒さに凍えるとか、どんな自殺願望なんだよ。


 グラメ村ではそんな間抜けを晒していないが、他の村にはその傾向があったようだ。このままだといくつかの村が冬を越せなかったと後で聞かされた。

 マジですかと思わず言いそうになった。





 売却用の伐採が無くなれば、その分のご褒美も無くなる。

 酒飲み共は宴会の終わりを嘆き、酒を好まない者は代替品として振る舞われた甘味の終わりに涙した。


 ただし、いきなり御褒美をゼロにすると反発を生む。

 しばらくの間は販売用ではなく製鉄用として伐採を同じ規模で続け、燃料の備蓄を通常よりも増やすことにした。そして徐々にご褒美を減らす計画である。


 鉄を増産する予定は無いが、燃料はあって困る物ではない。秋も深まれば製鉄が行われて炭の在庫が一斉に()ける。そこに新しく保管する余裕が生まれるので大きな問題は起きないはずだ。

 冬になって暖を取る燃料が足りない村が出た場合、余剰木材を売り付けるっていう手もあるからな。いや、売ってくださいと要請が……さすがにそこまで間抜けな村は無いか。そんな事にならないように爺さんも動いているのだし。



 今回の件で、村の中にはバイトに対する関心が高まった。


 昔からやっていた事だが、グラメ村では普段とは違う仕事を追加ですれば、相応の金銭を支払う事になっている。

 事前申請が必要だが、小遣い稼ぎを推進していたのだ。



 これまで、バイトをする人間は少なかった。

 現状に満足していたのだからしょうがない。


 しかし俺の命令で強制的にバイトというか追加の仕事を押し付けられた連中は、宴会や甘味というご褒美の旨味を知った。

 もちろん、御褒美よりも休みが欲しいという奴だって未だそれなりに存在する。

 だが、ちょっと余分に働いてでも酒を飲みたい、甘味が欲しいという気持ちが芽生えたのも確かな事実だ。


 グラメ村の生産性(やる気)は、ほんのちょっとだが向上した。

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