酒の話①
いつものパターンで造船所に風車を設置し、旋盤もどきで丸太を木材に加工する作業の一部自動化をしてみた。
造船所があるのはグラメ村ではないが、たまにはこの程度の手助けをしてもかまわないだろう。
いつもいつも手助けするわけではなく、造船所から風車の増設を求められた時は適正価格で請け負うわけだな。金額を聞いた領主が肩を落としていたからまず発注はかからないと思うけど。
風車の回転力を使えば色々と自動化できるという実例を知った連中が今度は自分たちの為に風車を作る日も近い、はずだ。
その前に、船を作らないといけないからなー。当分は風車を作る木材が手に入らないだろうから、アイディアだけに詰まったりして。
木材景気、木材特需で丸太を持っていけば普段の倍の値段で売れる。
グラメ村の場合、近隣の村がメシマズ村という森が近くにある村だったため、木材を売ろうと思えばヨカワヤ経由でちょっと離れた所まで持ち込む必要があった。その場合、中間マージンその他を持っていかれて利益の大半が消えてなくなるので材木商はやってなかったんだ。
それが特需という事で、グラメ村から丸太を持ち込める範囲に市場ができた。しかも国家事業で在庫になる事が無い。
人手は要るけどみんな大儲けである。
仕事が忙しくなった分は、これまた毎度の如く酒で誤魔化す。
大儲けだと言っては酒杯を掲げ、乾杯する。
そんな俺たちの行動パターンを読んでか、造船所の近くには酒を持ち込んだ商人がたくさんいたりする。
人間誰しも考えることは同じらしい。儲けの半分は酒などに費やしているよ。
で、酒を飲むならどれがいいという話になってきた。
今回の特需は長く続いていく。
これまでは単発の宴会が日常に変わりつつあり、みんなは酒の味にこだわる様になっていった。
この世界の酒は、温い麦酒と葡萄酒がほとんどだ。
その他の酒も無いわけではないが一般的とは言えない。一般大衆なら麦酒ばかりだろう。
麦や葡萄以外を使った酒や蒸留酒の類は無い。
俺は酒を通り越して純度100%のアルコールを作ったこともあるが、あんなものは例外中の例外である。魔法を使って酒をどうこうするのは一般的ではない。
酒を自作するには葡萄の様な果物か穀物が要る。
グラメ村でも一応だが、麦酒ぐらいは作っているけど、葡萄酒を作ろうにも葡萄が無い。葡萄の木はこっそりと村から数10㎞離れた場所に植えてあるけど、まだ小さな若木でしかないので収穫にはもう数年かかる。
グラメ村の酒造は外に売れる規模ではない。村の中で消費する分を賄いきる事も出来ない。
そして規模を大きくできるほどの余裕はない。いろんな意味で。
それでも満足度を高めるため、暑い夏にあう、美味い酒を造ってみようか。
まずはキンキンに冷えた麦酒を用意するところから始めよう。
なお、いくら冷えた麦酒を作っても「とりあえず生」とは言っていけない。言わせてはいけない。
それはとてもヤバかったりするのだ。




