家畜の話(中)
いつものように狩りを終え、獲物の解体を人任せにしつつ帰途に就く。
村の農地は森を焼いた跡に作ったので、森で狩りを終えて最初に見るのは青々とした小麦畑――を守る、防衛設備である。
農地は人手の増加を無視して初期に開拓した分だけにとどめている。広げ過ぎてもぐちゃぐちゃになるし、また来年にでも広げようと思っている。
その農地は周囲を腰よりやや上、高さ1mの石壁で囲っている。それだけだと害獣が侵入してくるので、内側に馬防柵と空堀も完備。馬防柵は上を尖らせた木で作る柵で、石壁を飛び越えた害獣の腹に刺さるであろう場所に設置している。それが駄目なら着地地点の空堀に落してしまえ、という発想だ。空堀は深さが3mもあるので、落ちたら普通の生き物は死ぬ。
設置初期はたまに馬防柵で腹を突き破った猪や、落とし穴、じゃない、空堀に落ちて事切れた猪が見つかる。
「さすが猪。前に進むしかできない訳か」と感心したが、しばらくすると近寄らなくなった。あれは学習前だったから引っかかっただけらしい。動物も経験から学習するようだ。
すでに獣避けとして十二分に効果を発揮する石壁その他だが、今日は不思議な事に生きたお客さんが引っ掛かっていた。
空堀の中に、兎が二羽。
怪我をしているようだが、二羽ともまだ生きている。
兎か……。
この場で殺しても構わなかったが、なんとなく俺は生きたまま持ち帰る事にした。
怪我を治してから、耳を持っての凱旋だ。
兎が「うー! うー!」と低く鈍い声で鳴くのが印象的だった。兎の鳴き声ってこんなのなんだな。初めて知ったよ。
「これ、絞めちゃうんすか? え、マジっすか?」
俺は持ち帰った兎を解体して貰おうと、解体用の小屋に行こうとした。
解体小屋は農地と住居エリアの間にある。壁の近くで血の匂いをさせると無駄に獣が寄ってくるし、住居の近くでは臭くて嫌がられる。
解体小屋の連中であれば兎の解体ぐらい難なく行えるのだが、今日はその前に農夫の一人に掴まった。
「いや、肉を解体する以外に何があるよ?」
「毛皮があるっす。いや、わざわざ生きたまま捕まえてたし、増やすのかと思っただけっすよ」
ああ、家畜候補と思われたか。
……アリか?
兎は1羽につき肉1~1.5㎏ぐらい手に入る。あまり大きくないが毛皮も手に入る。
育てやすいかどうかは知らないが、半年から1年で大人になり、餌の量が少なくて済むと聞く。どこぞの独裁国家で「兎を育てよう」というCMを流していた記憶もある。
悪くない選択かもしれない。
しかし、育てる余裕が無い。
いや、あまり手をかけずに育てる方法でいくか?
とりあえず、リーダー達に相談してみるか。




