商売の話(ヨカワヤ談)
まぁ、こういった商売の話であれば自分ひとりで考えてもしょうがない。専門家に話を聞くのが吉である。
「んー? 今は食糧以外、無理だと思いますよー。
ほらー、今年は不作だったじゃないですかー。それ以外を買う余裕なんてどこも無いですー」
……いや、今年だけじゃなくて、もっと将来的な話なんだけど。
何年も継続的に稼げそうな、それなりに儲かる、常に売れそうな何かって無いかな、と。
「それが分かっているなら、もう私がやってますー。私、商人なんですよー」
それは御尤もな話で。
「やっぱり食品関係は強いですよー。足りない所ばっかりでー、足りてる所の方が少ないですからー」
食い物関係は最強と。
しかし、それってうちでは無理な話だよな。
「この村では鉄を作れるんですよねー。それなら普通は食糧を自給自足っていうだけでもすごいんですけどねー。
他の村だと絶対に無理ですー」
いや、鉄は本当はオマケ程度に始めた事業なんだけどな。
今では一番の稼ぎ頭になっているけど。
とりあえず、状況は理解。
売れるものは自分で考えて作って広める気概がいる訳だな。
つまり脱穀機とか、ああいった便利な物を思い出して作り、売ればいいんだな。
「その時は私に声をかけてくださいねー。ちゃんとお手伝いしますよー」
もちろん有料ですよね。分かります。
まぁ、全部自前でやるよりはいいと思うけど。人手を割かずにアイディアだけで儲けが出せるようになるんだし。
ヨカワヤとの話は有意義であったものの、あまり状況が変わっていない。結局何をすればいいか思いつかない。
こうなると、あと他に相談できそうなのは公爵の爺さんぐらいだ。
ただ、爺さんに話を振ると俺は戦争参加を何度もすることになりかねない。確実に大きく儲かるし、金稼ぎ、金策として見れば悪くないんだけど。
俺、戦争参加は最低限にしたいんだよな。
戦って勝てる事と戦う事に忌避感を覚えない事とは全く違うし。相手から敵対したならともかく、自分から敵対しにいくのはあまり好ましくないんだよ。完全に俺の我儘って話だけど、勝ち負け関係なく、戦争そのものが嫌いなんだよ。
国に言われれば、正式に要請が来れば断らないけどさ。
でも、他に相談出来そうな相手がいない。余所の国に所属する義兄にはこんな話をしたくないし。
はぁ。
今度の新年会で聞き耳を立てるのもやるけど、一応相談するだけしてみるかな。
グチグチと独りで考え続ける気にもならないし。
農法の話も含め、言うだけ言ってみよう。




