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やりすぎ台風対策

 波が強くなった。俺の脳内で波浪警報発令中。気分の問題だ。

 風が強くなった。俺の脳内に赤フン姿のいかつい男の映像が流れた。何故だ。


 台風の影響で空が黒に染まる。

 強い風が小麦畑を揺らす。このままいけば、壊滅的な被害が出るかもしれない。

 もう数時間で接敵するだろう。何もしなければ蹂躙されるだけだ。徐々に近づく台風め。


 ――よろしい。ならば、戦争だ。

 自然現象だからって、見逃してもらえると思うなよ。





 と、強がってみたが、台風を消し去るほどの魔法を俺は使えない。

 よく言われる「台風は広島型原爆の数千倍のエネルギーを保有している」という言葉通り、シャレにならない強度(・・)を持っているのだ。数年前に≪大嵐≫という魔法で対抗してみたが、見事に惨敗。惜敗ともいえない残念な結果に終わったのだ。

 魔法の≪大嵐≫は台風に比べて影響範囲が狭く、効果時間が短い。こっちはそんな魔法でも1時間維持すれば魔力が枯渇するというのに、台風に対抗しようとすれば4時間は維持したいところだ。


 つまり、台風を外から打ち消すことはできない。

 これが前提条件。



 台風は気圧の低い方に移動する。逆に高気圧の場所を避ける。

 俺の魔法で気圧を変化させることは可能か?

 これは可能と言える。上昇気流を生み出せば低気圧を生み出せる。コスト度外視で考えるなら≪大嵐≫でいいんだけど。火災で発生した上昇気流が雨を呼ぶという俗説(・・)などに頼らなくても何とでもなる。

 それが俺の魔法。魔力チートだ。


 台風の誘導は可能。

 対策の一つとして、村から離れた海の上で試してみよう。



 風を防ぐ方向で対策も進めよう。

 まず、壁の用意。村を囲う強固な壁だ。≪鉄壁≫の魔法で厚さ1m、高さ3m、地中への埋め込み5mの壁を作っておく。形状は少し工夫した。やや内側に倒れるように配置することで風の影響を減らす。やらないよりはマシ程度の効果しかないのだが、言葉を返せばやってあった方がいい事なのだ。やらない理由も無い。鉄だけで作った壁は風雨に晒されればすぐに駄目になるだろうから、今回限りと割り切る。

 これに≪天蓋≫の魔法を足せば少ない魔力消費で風を完全に防ぎきれるはずだ。

 ただしこのやり方にも問題はある。一番の問題は、この世界ではレアな「鉄」を大量精製してしまった事だろう。≪壁≫系統の魔法って、消す手段が無いんだよな……。かといって≪石壁≫程度じゃ強度に不安が残るし。後で適当に誤魔化そう。高さを1m残し地中に沈め、石で覆えばきっと大丈夫。


 横からの風は壁で物理的に防ぎ、上から落ちてくるものは魔法の蓋で防ぐ。

 対策はこれだけでも大丈夫のような気がするけど、保険は欲しい。これまでいくつもの対策を考えてきたんだ。全部試すぐらいの気概を見せよう。それはきっと、今後の糧になる。



 気圧変更を狙い、海を凍らせる。異常な環境が周辺の気圧を高める。

 沖合で過剰な威力の≪炎≫系魔法を海面に使ってから≪風≫系統の魔法で上昇気流を作り、低気圧で針路を北東に逸らす。あ、村から東が海で、メシマズ村は南の方ね。台風は東の海から西に向けて侵攻中。

 ここまでで魔力は4割消費。けっこう減った。

 できれば台風の真ん中で発生する気流を制御して、台風を内から弱らせる事が出来るか試したかったが。それはまた今度という事で諦めよう。≪天蓋≫用の魔力を使う訳にもいかないし。


 他にも考えはあったが、いったん対策を区切って村に戻る。





「思っていたより効果があったのか?」


 俺は一人、鉄でできた壁の上から海の方を見ていた。

 台風は進路を変え、グラメ村方面ではなく北の方へと去って行ったようだ。


 俺の魔法の効果があったのか、それとも最初から村に直撃しないコースだったのか。真実は俺の知るところではない。

 だが、台風が村に来なかったのは確かな結果である。強い風にさらされてはいるが、大きな被害が出るほどでもない。


 台風が去った数時間後に残ったのは、氷漬けになった海から冷たい風が吹くグラメ村。しかも背の高い壁に囲われ日陰になっている。冷風は作物に悪影響が出るからと早々に溶かしたが、鉄の壁を沈めるのはまた明日。もう魔力が残っていない。

 どこまで対策が必要だったのか、どれだけやるのが適正だったのか。その線引きは、結果が出た今でも判らない。なんとなく今回はやりすぎた気がするが、被害が出なかったなら結果オーライ。失敗したかなと思った部分は次の課題だ。

 俺は俺の最善を目指すだけである。


 大豆を持ってきたメシマズ村の人が「ああ、毎年こうですよ」と言っていたが、気にしてはいけない。





 数日後。まだ残暑の厳しい、ある晴れた日。


 農業に勤しむ男たちは、全裸を卒業していた。

 全員、フンドシを着用している。

 俺の精神は全裸地獄から救い上げられたのだ。


 全裸は確かに素晴らしいが、股間のイチモツをプラプラさせておくのは安定感が無い。暑くならない方法で固定したかったようだ。

 フンドシは布地が少なくてもいいし、経済的にもやさしい。作るのも簡単で、これを見たヨカワヤも商品として取り入れたいと大絶賛だ。



 だけどな?

 フンドシの事を「グラメ布」と呼ぶのは止めてくれ。

 俺の村が美食の村ではなく、フンドシの村になるじゃないか。「グラメ=フンドシ」の図式だけは、断固として拒否させていただく。

 いやだから、「セガール布」も却下だ、却下!!

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