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美食への道 お好み焼き、もどき

 屋台を引いて道を作るのは、道の出来を確かめる意味もある。

 後で高速移動する車両を通す可能性もあるので、でこぼこしていないか確認するためにも、実際に車輪の付いた物を通らせるのは無駄ではない。今のところは工事は好調で、振動が発生しないことを確認できた。

 あとは落ち葉などの落下物さえ無ければ大丈夫と断言できるんだけど。そうなると、作るべきはトンネルだったかと考えてしまう日々である。


 今更変更できないので、考えても仕方のない事なんだけどね。





 村の中で、俺は料理が出来ない。

 侍女連中は「料理など、貴族のする事ではございません」と言い、それは自分たちのような者の仕事だと、俺が料理をすることに拒絶反応を示す。

 言い分としては分からなくもない。が、理解しても納得はしていないので、こうやって一人の時は料理をする。


 この世界。まだ弁当という概念が発達していないので、携行食はあっても弁当箱に料理を詰めて、とはやらないのだ。

 昼飯にとコンビニでパンを買ってもそれを弁当とは言えないような感覚なのだが。このあたりは言葉に対する認識の差になるんだろうな。人によってはそれを弁当という事もあるし。



 さて。

 屋台で作る料理はその日の気分によってコロコロ変わる。 


 今日はお好み焼きもどきでも作るつもりでいる。

 残念ながら、もどきである。

 キャベツが無いのでお好み焼きと断言できない現状が悔しい。ちなみにキャベツは王国内で流通しているが、グラメ村での栽培はしていない。そして日本で見た事のあるキャベツと違い、茎があり小玉である。たぶん、あれはキャベツだと思うけど確証はない。

 小麦粉を溶いた生地に海鮮素材や肉類、卵を混ぜて焼くからお好み焼きのようなものという認識でいいと思う。


 屋台に据え付けられた七輪でフライパンを熱する。

 七輪は火力の調整が難しいというか面倒なので、たまに魔法で火力調整をするのは致し方ない所だ。たまに見る異世界系ラノベで、日本出身の主人公がたき火やかまどで美味しい料理を作っているが、アレはどうやって望んだ火力を出しているのかと是非問い詰めてみたいところだ。何年もやっている俺でさえ、たまに失敗するというのに。

 あれかな。スキルとかチート能力とか。そういった補正で上手くやっているのかな。



 お好み焼きの生地は小麦粉を水で溶き、卵を加えるだけの簡単レシピが基本になる。

 しかし、あくまでそれは基本であり、応用はいくらでも存在する。


 よくやるのは大きく二つ。

 出汁を混ぜるのと、摩り下ろした山芋を混ぜるものだ。

 あとは揚げ玉を混ぜる事もあるが、これは生地というより具に近いので生地の範疇には含めない。そして牛乳を僅かに混ぜるレシピも存在するが、試す気にならないのでやっていない。


 出汁を混ぜれば生地だけで焼いてもそれなりに美味しくなる。ちょっと焦げやすくなるが、そこは慣れでカバーする。

 山芋を混ぜればふわふわの焼き上がりになり、普段とは違った食感を楽しめる。……入れ過ぎると酷い事になるが。山芋の状態次第では、いつもと同じ量を入れても駄目になるんだよ、ちくせう。


 お好み焼きと言えば、ソースやマヨネーズをかけるのが主流だ。あと鰹節。

 この中で用意できるのはマヨネーズだけである。トマトが無いのでお好み焼きソースを作る事が出来ず、鰹節は魚の乾物を作れても鰹節と言える物を作れたためしがない。鰹節の「カビ付け」ってどうやればいいんだろう? ただ乾燥させただけでは鰹節にならないんだよ……。


 とりあえずだが、マヨネーズとソースもどきの魚醤で食べるようにしている。魚の乾物は使わない。

 不味くは無い。

 わりと美味しい。

 しかし、お好み焼きとは言い難い違和感がある。魚醤を使っているので和風、そう言うには和風っぽくない味なのだよ。村では好評だが何とも言い難い気分になる。


 もう少しでいいから、何か工夫できない物か……。

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