潟
とりあえず、俺の知識に湖の水位を上げる方法は無い。
よってこの作業はここで区切りをつける。
結果は失敗というか中途半端になったが、あとは風車などで水をくみ上げ、水路を引くなどして村の水回りをよくするなどの手段をとれる。
やってきたことは全くの無駄ではない。どこぞの料理漫画の様に言うと「失敗したという経験を得た」わけだな。
どれだけ努力しようと願った結果が常に出る訳では無いので、たまにはこういった事もあるだろう。
求める結果と労力を比較した場合、努力が全く足りていないけどそれは努力のやり方が分からなかったからで。努力をするにしても基になる知識は必須というのを強く実感した。
いや、でも。湖の水位をあげる方法なんてあるのかね?
気が向いた、という訳では無いが、最初に作った潟を見に行くことにした。
地形改変の中でも、植物にとって海水の流入というのは強い影響を及ぼす。主に塩害といった方向で。
土壌の保有する塩分が増えた場合、塩害に強い植物以外は軒並み枯れ果て、塩害に強い塩生植物だけが生き残る。
海岸線から1~2㎞は、海風の影響でそのほとんどが塩生植物だけになる。
しかし、そこからもう1㎞ほど内側に行けば塩生植物以外が育っている。海岸線沿いの植物が海風を遮る防風林(防塩林?)の役割を果たし、内陸の植物を守るからだ。
俺がそのバランスを崩したことで、植生がどうなっているのかを見てみようという気になったのだ。
あれから約1月。
塩湖、潟周辺は見違えるほど変わったと言う事は無い。
一部の木々は枯れつつあるが、もともと海岸線と似たような植生だったのか、そこまで大きく変わったようには見えない。
潟の内部には海の魚が泳いでいるが、周りには打ち上げられ死んでいる魚も見受けられる。きっと干潮と満潮の差分でやられた魚だろう。
あとは海水が近くに来たことで、塩分を求める野生動物がチラホラと姿を現している。
普段は海岸まで行って塩分を補給しているのだろうが、近くにあるならその方が良いとばかりに集まっている。
漂流物で海水を飲んでばかりでは生きていけないとあるけど、海水も多少は飲んだ方がいいし、1日500mlぐらいなら飲んでも死なない。正確には飲料水の3分の1を海水で賄ってもいい、だけど。
しかし、よくよく見てみるとアイスプラントが生えていた。
アイスプラントとは塩生植物の中でも結構特殊な植物で、葉っぱの表面に塩を輩出してまるで凍ったかのように見える植物の事だ。
フランス料理でも使われると聞いたことがあるが、どんな料理に使えるかは知らないし、どうやって食べるのかも分からない。
静岡県にはシオーナというそのまま食べられるアイスプラントがあると言うが、これがシオーナと同じかは分からないし。同じと思わずいろいろと試してみればいいかな。
とりあえず、食べる事が出来る筈だという事で採取しておく。
あとはマングローブにでもなっていると面白かったんだけど、そこまでの変化は無かった。
しばらく観察がいるけど、もしも塩生植物が多くあるようだったらこの辺りの地盤を少し下げて、強制的にマングローブにしてみてもいいかな。
でも、マングローブって基本的には熱帯や亜熱帯の森林なんだよな。ヨーロッパ的な気候風土のこの辺りでは厳しいか?




