乾燥剤
村を作って4ヶ月が経った。
春が過ぎて夏になり、もうすぐ秋を迎える。
春に始めた畑から、小麦が収穫できる時期は目前だった。
実際にやってみて知った事だが、小麦は米と同じく約半年の成育期間を経て収穫できる。
収穫量は米ほどではないが、その分、農作業の手間も少ない。主に水関係で。米は水が大事なんだが、ここではそんな水を確保するのも大変なんだ。
俺達の農作業は素人仕事だが、それでもこの世界の農業レベルが低い事もあり、周囲と比較し遜色ない結果を出している。
今のところ小麦は豊作が期待できるので、色々と準備を進めよう。
小麦は小麦粉にして保管する。粉にした後は麻袋に詰めておく。
湿気と直射日光を避けるため、冷暗所に保管するのがこの世界でも一般的だ。
なお、冷凍保存はNGだ。常温に戻した時に結露するから、ベタベタになってしまう。
冬の事を考え温度管理のしやすい地下室を使うが、湿度の面から言えば地下はあんまり嬉しくない。海が近い事もあり、氷室のような使い方ならともかく、とにかく湿気が凄いのだ。結露を嫌って氷室を使わないのに、これでは本末転倒だ。
これをどうにかしないといけない。
そこで活躍するのが生石灰だ。
生石灰は酸化カルシウムで、石灰石を焼いて作ることができる。
石灰石はそこらで産出されるので、用意するのは簡単だった、らしい。物の手配は当たり前のようにヨカワヤ任せである。
生石灰そのものを買うと高くつくが、石灰石から自前で作れば安上がり。つまり、石灰石を焼くのは俺の仕事だ。普通だったら3日ぐらいかけて焼かないと駄目らしいが、俺がやればすぐに終わる。
生石灰は水をかけると発熱するが、俺にシリカゲルなどを作る知識も無いのでそこは諦める。他に良さそうな方法が無い。
かと言って悪い面だけではなく、水と反応した生石灰は消石灰となって土地をアルカリ性を高める肥料としても使える。土地の酸性値を確認する方法が今のところないが、作物の育ちが悪くなったときに試してみるのもいいかもしれない。
他にも製紙に使われるという話も聞くし、石灰石は何かと有用だろう。
「なぁ、ヨカワヤよ」
「なんでしょうー?」
「これが石灰石か?」
「はいー」
俺はヨカワヤの用意した石灰石を見て、頭が痛くなるのを感じた。
「これ、そこらにも転がっている石だよな?」
「ええー。説明したじゃないですかー。そこらで産出されますよ、って」
最初の交渉で、俺はヨカワヤから落ちている石を集める手間賃にしては割高で、生石灰を買うのに比べればかなり安い値段を告げられていた。
こんな……こんなオチとは…………っ!
「お値段はちゃんと確認しましたよー」
「分かっている!」
商談では、信用が何よりも大切だ。
ここで支払いを渋る事などしない。
これは、勉強代だ。
そう思わなければやっていられなかった。
石灰石なんて、一般的な日本人には分からないんだよ!!




