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法務官

 法務官がやって来た。


 古代ローマじゃ宰相みたいな政治のトップなんだけど、王国の言う法務官は「法律に詳しい文官」程度の役職だ。

 現代で言う、顧問弁護士だと思えば間違いない。


 法務官が派遣された理由は簡単だ。

 今回のニセ徴税官の件で俺が法律に詳しくなく、下手に順法意識がある為、公爵が俺を放置しては危険だという結論に至ったからだ。

 普段は俺の勉強相手を務める。





「ふむ。なかなか覚えているようですな。開拓村と普通の村を別ける定義は?」

「人口と産業規模、もしくは経過年数」

「具体的には?」

「人口が500人以上、産業は金貨100枚以上の生産物。あとは10年間の経過でも」

「産業規模についてですが、商業の規模も関わっているのを忘れていますな。村の中で貨幣経済が成立するか否かも条件の一つです。

 グラメ村の場合、まだ御屋形様が物資を統制しておりますので、開拓村から外れてはおりません。もっとも、この場合は一気に町の規模に変わりますので、普通の村との区別の条件とは違いますな。

 ですので正解は時間経過だけです」



 正直なところ、村に引きこもっているために学んだ法律以外は抜けが多い。

 あの詐欺師にはその隙を突かれた形になるわけだが、これは他の貴族たちにも共通する弱点だったりする。


 と言うのも、法律に詳しい事は確かに有用だが、そこまで必要にならない事が多いからだ。

 日本人だって政治家が法律にとても詳しいと言う事は絶対では無いし、多くの一般人は基本的な事、飲酒運転はしないとか「盗むな殺すな犯すな」みたいな常識レベルの知識しかないだろう?

 学べる環境にあるし学んだ方が有利と言うのは確かだけど、それでもやらないのが普通なのだ。


 他の貴族もこれと似たような状態で、覚えなくとも領地運営に大きな問題が無いなら法律の勉強をするより他の事を学んだりする方がいいと考えてしまう訳だ。



 だからと言って覚えなくてもいいわけじゃなく、誰か一人ぐらいは法律に詳しくないといけない。

 そこで法務官を雇って相談を投げかけるのが貴族的、と言う事になる。


 全部任せっきりになると法務官に騙されて変な事をする羽目になるので、ちょっとは勉強した方がいいのは変わらないけど。





「はい。では、今日はここまでです」

「ご苦労様」

「ありがとうございます」


 勉強を教わる身だが、それでも雇用関係から来る上下関係が存在する。

 教わる俺が感謝すべきだと思うが、俺は雇用主なので感謝される側じゃないといけない。それでも務めを労うぐらいは出来るので、授業が終われば一言声をかけておく。



「さて。

 授業はここまでですが、ここからは組織作りのお時間です」

「ああ、よろしく頼むよ」


 法務官はその業務上、領地運営のアドバイザーという側面を持つ。

 俺は俺が居なくても回るような、村の運営方法について相談を投げかける事にした。

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