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賭博への躊躇い

 盗賊の殺し合いは、思った以上に盛り上がった。

 俺には何が楽しいのかよく分からないのだが、この時代の人間には娯楽として成り立つ何かがあるのだろう。この辺り、日本人の記憶を持つ身としては今一つ共感できない話だ。


 娯楽といえば、一応、専用の発表会が開けそうな多目的ホールを作ってみた。

 しかし利用客はゼロ。

 当たり前だ。そもそも芸人や音楽家がいないのだから。外部から招致するのも大変だし、村人の中に歌や演奏が得意なのもいないし。

 どうしようかね? 俺が落語の寄席を一席打つにしても、時蕎麦や目黒のサンマぐらいしか知らないんだが……。





 娯楽の提供というのは、為政者にとって永遠の命題の一つだ。正確には民衆の不満を抑えて忠誠を誓わせる手段だが。

 あとは効率のいい徴税方法とどれだけ自分が贅沢できるかが残りの命題なのだが、それは横に置くとして。

 民衆に生きる楽しみを与えるのも、貴族の仕事だったりするから面倒だ。


 俺の場合、リバーシやチェスといったボードゲームを広めるのと、競技会を開く事で大体の不満を抑えている。

 あとは美味い飯に酒と風呂だな。どんな理由でもいいから、生きるためじゃなく楽しむための目標を与えるわけだ。死にたくないからと仕事をするようではアウト。楽しむための方が頑張れるのは人間なら何時でも何処でも変わらない不変の法則なのだ。


 

 それで、俺が与えられる娯楽にはまだストックがある。

 それはギャンブルだ。

 ポーカーの様なカードゲームは製紙技術が不安定で見た目が同じトランプを作れないのでまだ手を出せない。


 しかし、ダイスを使ったゲームであればわりと簡単に再現できる。

 ハイ&ローのように、出目の大きさを競ってもいい。ジャックポットも有名だ。丁半博打やチンチロリンだってルールを知っているなら簡単だ。

 ルーレットも作れるし、競馬は無理でも狼を頼れば似たような動物レースも可能だろう。

 やろうと思えばいつでも始められる。


 それでも踏み切れないのは、ギャンブルが堕落に繋がるイメージを持つからだ。

 偏見であると思うのだが、それでもパチンコ破産などのような悪いイメージが付きまとう。パチ屋とか、朝鮮半島の経営者が日本人から金を搾取する悪しき文化という認識があるし。あれ、経営母体が韓国人や北朝鮮人なのに、朝鮮半島にはパチ屋が無いんだぜ?

 とにかく、俺の中で「ギャンブル=悪」の図式があり、それを崩しきれないからなのだ。



 公営ギャンブルでも始めて、非合法賭博を裏で取り締まるスタイルの方がいいとは思うんだけど。

 どうにも駄目なんだよなぁ。

 清濁併せ呑む覚悟はしてきたつもりなんだけど。踏ん切りがつかない。


 殺し合いを見世物にした俺が言う事じゃないって?

 あれは処刑のついでだからいいんだよ。悪が滅んだ、悪は滅びるっていうのを分かってもらう道徳教育を兼ねてたし。

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