盗賊（前）
やっぱり貴族は面倒くさい。
俺の短絡的に結論を出し、新年祭の終わりを迎えた。
で、その帰りがけに隣村の領主、メシマズ男爵に捕まった。
「折り入って、相談したいことがある」
「野郎ども、気合入れろ！」
「「「応！！」」」
「盗賊は！」
「「「金だ！！」」」
「見付けたら！」
「「「殲滅だ！！」」」
「ねぐらがあれば！」
「「「全て奪え！！」」」
「メシマズ村の連中よりも早く潰すぞ！」
「「「ヒィーーハァーー！！」」」
村に戻った俺は、対盗賊の決起集会を行っていた。
メシマズ男爵が言うには、俺たちの村の近くに大規模な盗賊団が来るらしい。
おそらくだが、俺のグラメ村を襲うのが目的らしいのだ。
グラメ村は鉄生産で金持ちになり、襲う側からすれば旨味のある得物だ。
そして村が出来て３年経つか経たないぐらいなので、きっと防備も薄いはずと思われている。それに村だし、そんなに戦力がいないだろうと。
一番怖い魔法使いの俺は新年祭で王都に向かった。
片道１２日、昔なら１５日はかかった旅程を考えれば、新年祭に合わせて動くだけで俺のいない間に余裕で奪い尽くせる。
奴らの思惑はそんなところだろう。
この情報を手に入れた俺がやる事と言えば、迎撃一択である。
王都から夜通し飛んで即日で村に戻った俺は混乱が起きないように全員に情報を伝達、希望者を募って盗賊を襲うと皆に言い切った。
村の防衛施設を使って戦う方が良いようにも思われるが、それだとメシマズ村に先に襲われ被害が出るかもしれない。それに、いつ来るか分からない盗賊に戦えない村民が怯えるのも業腹だ。いっそ俺が攻めに出るから安心だと思われる方が良い。
こちらを襲おうというのだ、むしろ食い殺してやるという気迫で挑むべきだろう。
なお、メシマズ村にもこの話は伝えてある。男爵の委任状を使ってこの件に関してのみ、俺の指揮下に入るように通達が入った。
グラメ村の前に襲われる確率は五分五分と言ったところ。逃げた村人がグラメ村に警告を出すのを嫌うかどうかが分かれ目だ。念には念を入れるべきなのだ。
余談ではあるが、メシマズ村の近くには東西に流れる小さめの川があり、川沿いには他の村や町もある。一番近い村とは１０㎞ぐらいしか離れていない。
無計画な伐採が行われていないのでどの村の近くにも林があり、盗賊が隠れて移動する分には困らないだろう。歩きであれば。
さすがに盗賊が高級品で軍事において重要な馬を使えるとは思っていないが、馬を使われるといろいろ厄介だ。
歩きであれば１日の行動範囲は２０～３０㎞で済むが、馬を使われると５０㎞以上の行軍が可能になり、メシマズ村―グラメ村間の街道封鎖も容易になる。
街道沿いに水場を作ったので、馬の運用も容易だろうし。持っているかは別にして、馬を使う選択肢があるのは間違いない。
馬防柵でも作った方が良いかね？
