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結婚

 結婚かー。

 とうとう俺も死刑執行(婚約承諾書)のサインをするわけだ。


 収穫祭の盛り上がりを遠くに見つめ、俺は大きく息を吐いた。



 もともと、収穫祭の日に結婚することは周知してあった。

 だから婚約者が嫁に変わった事を、みんな知っている。


 「おめでとう」と祝福の言葉を貰うが、何がめでたいんだかと皮肉を思う。口にはしないが、嬉しくもなんともない。

 できるだけ態度に出ないようにしているが、それはどこまで有効なのか。勘の良い奴、付き合いの長い奴らにはバレてるんだろうな。あえて指摘する奴がいないのは幸いだが。





 収穫祭はやっぱり盛り上がる。

 小麦の収穫量が少ない事を気にしている奴もいたが、酒が入ればみんな陽気だ。朝から肉を喰らい、酒を飲み、歌を歌う。


 今年は村主導でみんなが同じ歌を歌えるので、出来るグループが普段と違う。

 去年までは同じ村の出身で固まり、その中で通じる歌を歌っていた。だが今年は近くに居る奴、同じ職場の奴と肩を組み、陽気に歌い上げる。


 歌は偉大だ。心からそう思う。



 競技会は常連が決まりつつあり、波乱の無い展開で面白みに欠けた。

 一番盛り上がったのは予選の初参加勢が活躍する場面であり、あとちょっとで本戦に届きそうだったので惜しかった。その時は俺も声援を送ったよ。

 そのうち、○んねるずでやってた人間将棋とか導入してみたいものである。


 そして今年も「YUUSYA」はクリアされず。第4関門クリアが最高成績だった。





 競技会が終わった後に結婚式だが、この世界の結婚式なんてこれでいいのかと思うほどあっさりしている。

 皆の前で「こいつらはみんな俺の嫁だ! 文句のある奴は出て来い!」と宣言するだけである。


 誓いのキスも宣誓も指輪交換もしない。神前式でもなんでもない、これでいいのかと言いたくなるようなものだ。

 一応、仮設の祭壇に生贄の猪を捧げたが、それ以外に特別な事をしない。あとは適当に騒ぐのが礼儀であった。

 結婚の披露宴なので振る舞う酒は普段よりいい物を。この時ばかりはエールではなく、ワインが振る舞われた。ワインは女向けだったのか、男連中は途中からいつも通りエールばかり飲んでいたようだが。



 焼けた肉の匂いとこぼれた酒の匂い。ついでに誰かが吐いた○○の酸っぱい臭いが辺りに漂う。


 何回注がれた杯を空にしたか。

 どれだけ渡された肉を口にしたか。

 貰った祝いの言葉は数知れず、天に拳を何度も突き上げ。

 終わってしまえばあっという間の一夜は肉体的にも精神的にも疲れる結果となった。



 別に、馬鹿騒ぎが嫌いってわけじゃないけど。騒ぎのネタが自分って言うのは嬉しくないよねぇ。

 酒やらなんやら、魔法で処理しなきゃ途中で倒れるし。そんなに飲めないし食えないっての。祝う気持ちは言葉だけで十分だっての。



 役得? 新婚初夜?

 そんな風習も無いよ。

 昨日も一人寝ですが、何か?

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