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麻布

 麻を手に入れたので、布を作る準備をしておいた。

 具体的には、機織り機である。


 機織り機は、縦の糸を上段下段交互に固定して横糸を通してからハンドルを回すと上段と下段が切り替わるようにしたものだ。

 その構造はとてもシンプルで、この世界で一般的に使われている品でもある。なのでヨカワヤに頼んで買っておいた。


 織った布を巻き取ることで長さの調節もできるし、機織り機はこの世界でも十分な物が完成している。

 風車を動力にして完全に自動化させることを考えたが、一つ一つの工程ごとに作業時間を設定する必要があり、なおかつ細かい差異に対応できるようにしないと途中で糸が切れたのにそのまま作業を続けるかもしれないといった不安もある。最終的には人の方が安心して任せられると判断して、自動化は止めておくことにした。

 けっして、手を抜いたわけではない。



 麻布は硬くて頑丈なものと柔らかくしなやかなものと二通り作れたが、そのどちらを使っても肌に直接触れる布としてはあまり質が良くない物しか作れない。

 綿との比較だが、伸びにくくてザラザラした感触が気になり動きを阻害してしまうのだ。麻布には汗を蒸発させたり臭いを防いだりする効果があるのだが、下着や肌着には向かない。上着としては優秀だけど。


 その理由の半分以上が技術不足からくる質の低さなので、どうやって改善しようかと悩んでいる。

 一回、機織り機を改造してジーンズなどでやっている織り方、「四つ(あや)」を試してみたが、全く意味が無かった。あれは伸縮性をよくするもので、肌触りを改善するための織り方じゃない。そのうえ破れやすくなるなど、耐久性が落ちてしまった。改造した機織り機はお蔵入りである。



 難しいと言えば糸の太さも問題で、布にするための糸に規格を作りたいのだが、そこも上手くいかない。

 麻の繊維をそのまま使う訳では無く、糸にしてから使っているわけだが、元になった麻の太さがマチマチなので誤差が出る。そんな糸で布を織れば出来が悪くなるのも当然だ。

 これにはいい解決策を思いつかないので、そういうものだと諦めるしかない。



 ただ、あまり評価できない麻布だが、それは俺が現代日本を比較対象にしてしまうからだ。村の皆にしてみれば「ちょっと質が悪いかもしれない」と、許容範囲となる。

 売り物にはできないけど、自分たちで使う分には問題ないといったところか。


 何にせよ、あとは経験を積んで質を上げていくしかない。最初から上手くいくなんてただの幻想だ。

 俺たちの機織りはまだ始まったばかりだ。

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