釣り堀(上)
お米が無ければ、麦を食べればいいじゃない。
ふと思い出したんだが、米と同じ要領で麦を炊く事で、米の代用品になるんじゃなかったか? いや、コンビニ飯で食った麦飯は米と麦をブレンドして炊いたものだったが。
なに、失敗しても食えなくなる訳じゃない。そのまま麦粥にすればいいだけだ。
と、言う訳で。まずは安い、簡単に育つライ麦で試してみた。
「不味い。けど、懐かしい」
食感などは米の飯に近いが、味や匂いが似ても似つかないので違和感が凄い。
いや、食感も微妙か? もっちりとした米に比べると、炊き方が悪かったのか表面がどろっとして中は硬い。手作り飯盒で炊いてみたが、形状とかが駄目で圧力に問題があったかな?
この不味さ、炒飯にしたらマシになるといった事は無さそうだ。
山脈作りが終わってもユリアはホバークラフトに乗りたいと言っていたが、無用となった物を使う気はない。あれはちょっと弄って船にしたけど、とても残念そうにしていた。
いやね、もともと船を作るために用意した木材でホバークラフト作ったんだよ。ここで船にしないと色々と計画がずれるって言うかさ、海藻の回収量を増やさないと鶏たちが飢えるんだよ。だから仕方がないのだ。
代案の時速200㎞空の旅は丁重に断られたので、ユリアのお出かけは当分無しだな。
海のお仕事だけど、クレーンで荷物の降ろしが楽になったとはいえ、まだまだ人手がいる状態。
ヨカワヤ経由で人を集めているけど、最近はなかなか集まらなくなっている。失業者が少ないのは国としてはいい事なんだけど、俺としては困った話だ。
事業って小規模よりも大規模の方がやりやすいんだよ。鶏の数を減らすよりもたくさんの鶏を維持し続ける方が品種改良には都合が良いのだ。
それに自分達も食べるからね。
農地開拓をストップしてから、海の人員不足は開拓メンバーを回してやりくりしている。
補充人員には海のお仕事のうち罠にかかった魚などの回収を手伝わせ、主力メンバーは全員で船と埠頭からの素潜りだ。
埠頭は海の深い所まで出っ張っているので、潜ればすぐ下にいろいろ生えている。
頑張れば魚も釣れるだろうけど、釣りは苦手だ。釣り竿だけ用意して手の空いた女性にでもやらせてみるが。
「いきなり竿が折れました」
竿のしなりを再現できず、徒労に終わる。
あと釣り竿を構えてじっとしている人を見ると、それが正規の作業員ではない女であっても男たちがイラッとするようだ。素潜りの邪魔にもなるし、場所を考えないと駄目だね。
場所を変えるためにも、村の中に釣り堀を作るか?
海底にトンネルでも作って魚が侵入する経路を確保し、魚を釣ったり海藻を獲ったり。そんな事が出来れば面白いかもしれない。
山脈作るよりは簡単だし、たまには遊びも欲しいよね。




