サナダさん(上)
古代の社会を現代人が見ると「アホかお前ら」と言いたくなることが多い。
食糧自給率、80%で「凄い豊か」と褒められる国家運営。
足りないから戦争で「国民を減らし」「他国民を奴隷にして」「食糧を奪い」国を維持する。
貧乏人は死にますが、何か?
「何か?」じゃねぇ。
アホだろ、マジで。
奪う前に増やせよ。出来るだろう?
そんな酷い現実は横に置き、村の食糧自給率が780%に到達した。
78%とか、そんなチャチな数字ではない。780%だ。
理由はいたって簡単。
獣の肉である。いっぱい獣の肉を集めているから、自給率が半端じゃないほど高くなった。
「このとおりですー!! 次回までにお肉を集めないと、サヴちゃんがーー!!」
事の起こりはヨカワヤから、塩漬け肉の大量発注がかかった事だ。
一ヶ月間に村で消費される獣の塩漬け肉の10倍以上。それだけ売って欲しいと頼み込まれた。2m級の獣を100頭分ぐらい? グラム換算だと数tなんだけど。
獣を狩るのはいいけどさ、熟成し始めたの肉を放出すれば足りるけどさ。毛皮を剥いだり解体するのは大変なんだぞ? なんて無茶だ、それは。
土下座するヨカワヤだって必死だ。
いいんだけどさ。出せるし、余裕があるし、大きな負担というほどではない。
けど、負担なんだよ。大きくないだけで。
そこを分かっているのか?
分かってますー。
ですよねー。
ああ、もう! 面倒くさい!!
今回の件。単純な話、嫌がらせだ。
俺達に、ではない。ヨカワヤたちへの、だ。
別に、不思議な話じゃない。
女性の権利など無いこの世界で、女商人は違法ではないが法的に保護されている立場ではない。だから立場はかなり弱い。
王都のサヴが取引先で下手を打って、無理難題を押し付けられた。その難題が塩漬け肉の商談だ。
貴族相手の商売なんてやってないけど、塩漬け肉を一番欲しがるのが貴族様だったため、貴族が絡む商談になった。窓口に選んだ取引相手の男の商人が女商人で枕営業しようと、自分の取引相手に会わせたらしい。
サヴは貴族に気にいられるが、夜のお相手を拒否。貴族様を怒らせたらしい。
その後、どうやって話を持っていったのかは知らないが、塩漬け肉を大量に用意すれば許してもらえるという流れになった。失敗したら即奴隷コース。
そこでタダではなく、販売という形にできたのは凄いけど。相手の貴族にしてみれば損を出すことの無い勝負なわけで、結果がどう転んでも「美味しい」。サヴが肉を用意したとしても適正価格で買うだけだし。負けなど無いのだ。
この世界なら、どこでも転がっている不条理だ。
しかし、ちょっとムカつくよな。
強い立場で相手を弄ぶのって、自分がやるのはいいけど、他の奴がやるとムカつく。
ついでに、俺の開拓に影響が出るじゃないか。専属商人がいなくなったらどうしてくれるんだ。
俺だってこの迷惑な話の当事者なんだ。ちょっとぐらいなら、イタズラしてもいいよな?
お代は命になるかもしれないけどな。
うけけけけけけけ。




